2017年12月30日

申請権の侵害は絶対に許されない!

 かりに、ユニクロの会長やソフトバンクの会長が、生活保護を申請したらどうなるか。超巨額の資産を持つ人は申請できない。そんなことはない。どんな人であれ、申請があれば福祉事務所は受け付けないといけないのだ。調査して要件を満たさなければ、却下すればいいだけだ。不正受給を防ぎたいなら、生活の実情をきちんと調べればいいことだ。公的支援の必要な人を心理的に圧迫して保護から遠ざけると、死に追いやってしまうことが現実にある。
 厚労省は2000年代以降、「申請権の侵害は絶対にいけない」と、通知や会議でたびたび強調している。このため、以前に比べると水際作戦は多少減ったようだが、もし、申請権の侵害や職員の暴言があれば、国家賠償法による自治体への賠償請求もできるのだ。


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2017年12月29日

相談だけでかわす「水際作戦」に注意

 相談には乗るけれど、あれこれ言って申請させずに終わらせる。そういうやり方が1980年代からあちこちの福祉事務所で行われ、「水際作戦」と呼ばれてきた。
 「まだ若いから、働いて何とかなりませんか」
「まずは親族に援助を頼めませんか」
「住所不定の人はねえ」「持ち家だとねえ」
「借金があるとねえ」
保護を増やしたくない面接担当の職員から、そんなことを言われる。「簡単に受けられると思ったら困りますよ」と説教されたり、「女性だから、給料の高い仕事もありますよね」などと意味深げに示唆されたり。尊厳を傷つけられて保護の利用をあきらめ、二度と行かないと決めてしまう人もいる。
 生活に困っている人の多くは、精神的に弱って、引け目を感じている。言葉の内容や言い回し、態度によっては、メンタルにこたえるのだ。
 職員が高圧的に出るのを防ぐためにも、面接のときは応対した職員の氏名、所属を確認し、質問や発言について、メモを取りながら進めよう。
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2017年12月28日

住まいがなければ、現在地の福祉事務所へ!

 保護を申請できるのは、本人、民法上の扶養義務者、同居の親族だ。ただし、放置すると生存にかかわるような急迫状態のときは、申請がなくても福祉事務所が職権で保護できる。
 福祉事務所は、すべての市(政令市は各区)と東京の特別区、一部の町村が設置しており、郡部には都道府県が設置している(厚生労働省「福祉事務所一覧」)。福祉課、生活援護課、保健福祉センターといった名称のこともある。
 住民登録の有無とは関係なく、いま住んでいる所を受け持つ福祉事務所に申請する。体調不良や障害などで出向けない場合は、電話などで連絡して職員に来てもらって申請することだ。住まいがないときは、現在いる場所を受け持つ福祉事務所が担当窓口になる。
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2017年12月27日

生活保護の申請は支援者と一緒に行こう!

 生活に困って生活保護を利用したいと思った場合、原則として福祉事務所に保護を申請する必要がある。そのとき大事なのは、一定の知識と胆力のある人を除いて、いきなり、1人で福祉事務所の窓口へ行かないほうがよいということ。
親身に手助けしてくれる窓口担当者もいるのだが、一方で、保護を増やさないのが仕事のように勘違いしている職員もいて、間違った説明をされたり、申請できないまま相談だけで帰されたりすることがあるからだ。きつい質問や言葉によって、精神的なダメージを受ける場合もある。
支援団体や法律家の協力を得るか、他の福祉関係の機関にまず相談するなどして、なるべく、誰かに同行してもらうことである。
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2017年12月26日

厳しい運用、冷たい対応、恥の意識……

 生活保護の捕捉率の低さは、制度があっても利用しにくいことを示している。
 なぜ、そうなるのか。1つは資産要件の運用の厳しさ。現金・預貯金が保護基準の1ヵ月分より多いと申請しても通らない。クルマの保有は求職・通勤・通院などの事情がないと認められず、車がないと日常生活が不便な地域では大きなネックになる。
 福祉事務所の対応も問題。利用できないと思わせる説明を職員がすることや、冷たい態度を取ることがある。
 生活保護の利用には、原則として本人の申請が必要。けれども政府・自治体の広報は不十分で、制度の正しい知識・理解が伝わっていない。それどころか、恥の意識が社会に広く存在している。申請後、親族に対して、申請者を援助する意思があるかどうかを問い合わせるのも、利用しにくくする壁になっている。生活が苦しくても我慢する人が多いわけだ。とりわけ住民同士が互いをよく知るムラ的な風土の地域では、心理的な抵抗感が大きい。
 必要な時に生活保護を利用することは、憲法上の権利である。遠慮しないで利用できるよう、まずは行政からの積極的な周知広報を行うことが重要ではないだろうか。
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2017年12月25日

研究者の推計でも、捕捉率は2割に満たない

 生活保護基準で線引きした貧困率や捕捉率については、1990年代から何人かの研究者が推計してきた。その多くは、所得のみの判定で10%から20%の間だった。
 最近では、山形大学の戸室健作准教授が、総務省「就業構造基本調査」のデータをもとに、生活保護基準で見た貧困率、捕捉率を都道府県別に計算しました(「都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子どもの貧困率、捕捉率の検討」)。
 それによると、所得のみで判定した2012年の捕捉率は、全国平均で15.5%。厚労省の推計と、ほぼ一致している。都道府県別で高いのは大阪23.6%、北海道21.6%、福岡20.0%、東京19.7%、高知18.7%の順。低いのは富山6.5%、長野6.6%、山梨7.1%、岐阜7.9%の順。かなりの地域差があるが、高くても2割台にすぎない。
 戸室准教授の計算は生活扶助、住宅扶助、教育扶助、一時扶助の合計額で判定しており、医療扶助、高校就学費などは入っていないので、実際の捕捉率はもう少し低いはず。
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2017年12月24日

所得のみで15%、資産を考慮して32%の捕捉率?

 現実の保護世帯数を、保護基準以下の世帯数で割った数字は、次の結果だ。
 所得のみで判定した場合   D/(B+D)=15.3%
 資産も考慮して判定した場合 D/(C+D)=32.1%
 親族の援助など他の要素もあるので、正確な意味での捕捉率にはならないと厚労省は説明したが、1つの目安にはなる。
 ただし、ここで用いた保護基準額は、生活扶助、教育扶助、高校就学費の合計。住宅扶助、医療扶助などは、この計算上の保護基準額に入っていないので、実際の低所得世帯はもっと多く、生活保護による捕捉率はもっと低いと考えられる。
 厚労省は「同様の調査を定期的に実施し、その動向を把握していく」と説明しているが、その後、こうしたデータ分析は公表されていない。
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2017年12月23日

生活保護の食費や光熱費、67%の世帯で減額へ

 来年度からの生活保護基準の見直しで、厚生労働省は22日、生活保護費のうち、食費や光熱費に充てる「生活扶助」について、受給世帯の67%で減額となると発表した。
 同省では受給者の生活への影響を考慮し、世帯ごとの引き下げ幅を5%以内と決めていた。
 世帯類型別に見ると、単身世帯は78%、子育て世帯は43%でそれぞれ引き下げられる。都市部の50歳代単身世帯は5%減になる一方、地方は増額の傾向にあり、50歳代の夫婦の場合、現行より9.7%増える。
 生活扶助基準は5年に1度、見直されており、来年10月から3年間かけて段階的に約160億円(1.8%)削減される。
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所得が保護基準に満たないのは705万世帯?  厚労省は、民主党政権だった2010年4月、生活保護の捕捉率の推計を初めて公表した(同省ナショナルミニマム研究会第8回資料「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」)。  この推計は2種類の統計データをもとに計算された。そのうち総務省の「全国消費実態調査」(2004年)は、回答するのに家計簿をつける労力がかかり、低所得世帯の割合が低く出る傾向があると指摘されている。そこで、より信頼度が高いと考えられる厚労省の「国民生活基礎調査」(2007年)

 厚労省は、民主党政権だった2010年4月、生活保護の捕捉率の推計を初めて公表した(同省ナショナルミニマム研究会第8回資料「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」)。
 この推計は2種類の統計データをもとに計算された。そのうち総務省の「全国消費実態調査」(2004年)は、回答するのに家計簿をつける労力がかかり、低所得世帯の割合が低く出る傾向があると指摘されている。そこで、より信頼度が高いと考えられる厚労省の「国民生活基礎調査」(2007年)をもとにした数字を示そう。
 この時点の世帯総数(A)は4802万世帯でした。そのうち、所得が生活保護基準に満たない低所得世帯(B)は、597万世帯(12.4%)だった。それに「貯蓄が保護基準の1か月未満で住宅ローンなし」という条件を加え、資産も考慮した保護基準未満の低所得世帯(C)は、229万世帯(同4.8%)となった。
 当時の生活保護世帯数(D)は108万世帯。保護を利用している場合、保護基準ちょうどの収入額、あるいは勤労収入があれば保護基準を若干上回る収入額になるので、生活保護世帯は、保護基準「未満」の低所得世帯(BやC)には含まれない。
 したがって、保護基準「以下」の世帯数を出すには、保護世帯数を加える必要がある。所得のみで判定した保護基準以下の世帯数(B+D)は、705万世帯(全世帯の14.7%)、資産も考慮した保護基準以下の世帯数(C+D)は、337万世帯(全世帯の7.0%)になった。
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2017年12月22日

増え続ける高齢者の生活保護

 増え続ける高齢者の生活保護 2015年の65歳以上の人口は約3,394万人だったが、2025年には3,658万人に増加し2035年には3,740万人・2045年には3,857万人に増加することは間違いないところだ。
 つまり、2015年に比べて30年後の2045年の高齢者の人口は463万人も増加するということだ。
  近い将来に「東日本大震災」級の大災害が頻発し核戦争でも起きない限り、高齢者の人口は間違いなく増えるのだ。
 しかも、日本の近未来の社会保障は不安が一杯。何しろ将来の社会保障の道筋を決めているのは、現在、高齢者である政治家なのだ。自分達が生きている間に、痛みを先取りするような政治家は残念ながらいない。
 例えば、年金の給付額や医療費や介護費用を考えても、今より改善しているとは考えられない。つまり、年金の給付額は減少し医療費や介護費用は増えているのではないだろうか。
 その結果、年金だけでは暮らせない高齢者が増え、生活保護に頼らざるを得ない人が増える可能性が十分に考えられる。したがって、生活保護と年金をリンクさせた新しい発想の高齢者のセーフティーネットの構築を急ぐ必要がある。
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2017年12月21日

生活保護とワーキングプアの問題

 日本がデフレ経済に陥ってすでに20年あまりになるのだが、その間、勤労者の平均所得は減少を続けてきた。一方で生活保護の支給額は減っていないため、生活保護支給額と最低賃金の逆転現象が起っている。
 つまり、生活保護支給額がフルタイムで働く人の最低賃金を上回る逆転現象が起きているのだ。しかも、生活保護の受給者は保護費に加えて医療費や介護費用が免除になり、住民税・国民健康保険・介護保険料・国民年金保険料・NHK放送受信料などが免除になる。
  したがって、生活保護受給者の実質年収を勤労者の所得に換算すると、年収400万円に達するという試算も報告されている。また、夫婦と子供2人の世帯の場合は、実質年収が500万円に達する場合もあることが指摘されている。
 その結果、就労可能な若い世代において、この逆転現象は社員になれずフリーターや契約社員として働いている人たちの労働意欲を減退させていることは否定できない。
 つまり、「あくせく働いてワーキングプアになるよりも、失業を理由に生活保護を受給したほうが得」という心理が、就労可能な世代の生活保護申請を後押ししていると言える。
  したがって、最低賃金が上昇しフルタイムで働く人の賃金が生活保護支給額の水準を上回ることが最も望ましい状態なのだが、景気が回復しなければ一朝一夕に解決できる問題ではないのだ。
 また、一方で「生活保護支給額の水準が適正なのか」という議論があることも事実だ。例えば、先進諸外国の同様の制度と比較してみると、比較対象のイギリス・フランス・ドイツ・スウェーデンの中で日本の支給額は最も高くなっている。
特に、日本の支給水準は、フランスとスウェーデンの約2倍になっていることは驚きなのだ。ただし、社会保障制度が異なる諸外国と、一概に金額だけで比較することにあまり意味はないのである。
そして、もう1つの問題点は、世帯所得が生活保護支給基準を下回る世帯が依然として多いということなのだ。ある試算によると世帯所得が生活保護支給基準を下回る世帯が705万世帯に対し、そのうち、生活保護を受給している世帯は108万世帯に過ぎないという調査結果が出ている。
つまり、生活保護を受給している世帯の割合は約15%に過ぎず、残りの85%の世帯は制度の認識不足かモラルやプライドが高いという理由で生活保護を申請していないのだ。
したがって、今後も生活保護支給額とフルタイムで働く人の最低賃金の逆転現象が続くと、85%の世帯が生活保護の申請を始める可能性は否定できないのだ。 かなりの確率である。
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2017年12月20日

貧困問題、50代男性「心まで貧しくなっていく」

 年功序列の賃金も、年金もあてにできない現代。子供たち、未婚女性、シングルマザー、高齢者……と、幅広い世代で貧困にあえぐ人々が増えている。そこで街の人の声を聞いた。
 「保育園落ちた日本死ね」発言が国会で取り上げられて以降、子育てや労働環境を見直そうという風潮が強まる昨今。
 「保育園に預けられないから、働きたくても働けない。結局、無認可の保育園に預けたものの、認可に比べると無認可は保育料が高額。ようやくパートとして働くことができたけど保育料がパート代を上回り働いている意味がわからなくなった。ノイローゼになりそうです」(30代・女性)
 最近では、お金がないために結婚できない貧困女子も増えているという。
 「月給から家賃を引いて8万5000円以下だと貧困女子層に分類されるらしいんですが、まさに私の置かれている状況です。お金がないので着飾って婚活なんてできない。仮にパートナーがお金を持っていても、夫婦の所得に差がありすぎてうまくいくわけがない」(30代・女性)
 「30歳までに夢を叶えられなかったら、まともな仕事に就こうと決めていました。夢破れて働き口を探したもののなかなか見つからなくて……せめて手に職のつく夢を見るべきでした。30歳でゼロからのスタート、不安で仕方ないです」(30代・女性)
 「大学のために奨学金を借りた友人たちは、就職後まったく貯蓄ができないため“このまま20代を地味な生活で終えるのかな……”とボヤいていましたね」(20代・男子)
 「うちの娘は30代ですが、いまだに実家暮らし。親に甘えているせいで、離職後もまともに復職しようとせずにアルバイト生活です。1度も1人暮らしをしたことがないので結婚できるかどうかも心配。負の連鎖の止め方がわからない」(60代・女性)
 下流老人という言葉が生まれたように、貧困の魔の手は全世代に忍び寄る。
 「妻から熟年離婚を叩きつけられ、50歳を過ぎて単身になってしまった。財産は取られ、家もなくし、今は郊外にアパートを借りて暮らしている。心まで貧しくなっていくのがわかる」(50代・男性)
 「治療による高額の医療費に生活が圧迫されています。この後、何年生きるのかわからないのにお金を支払い続けるくらいだったら、確実に死ねる薬があるなら100万円で購入して安楽死を選びたいくらい」(60代・女性)
 「ようやく子育てが終わったと思ったら、今度は親が認知症に。介護施設に入居させたいけど、保育園同様に入所待ち。福祉が充実していないことで、必ず誰かに貧困というしわ寄せが及ぶ。金持ちケンカせず……そんな暮らしがしてみたいです」(40代・女性)
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2017年12月19日

居住をめぐる貧困ビジネスA

 「住まい」に関わる貧困ビジネスで、ここ数年で社会問題化した事例を類型化すると以下の4つに分けられる。
 1  スマイルサービス、シンエイエステートなどの「ゼロゼロ物件」業者
 2008年、東京の中央線沿線を中心に「ゼロゼロ物件」を提供していた「スマイルサービス」が、家賃を滞納した入居者の鍵交換、荷物撤去、居室への侵入等で入居者ら9名より提訴された(後に和解が成立)。同社は一時期、入居者との間に「施設付鍵利用契約」という名称の契約を結んでおり、入居者の居住権を著しく侵害する内容になっていた。批判を受け、現在は一年間の定期借家契約に変更。同社は別会社の「ハウスポート」という名前で事実上、営業を続けている。
 同様の「ゼロゼロ物件」では、東京都三多摩地域を中心に物件を展開する不動産業者シンエイエステート及び関連会社のシンエイも問題になっている。2009年4月、東京都内の男性が家財道具を全て撤去されたとして、両社を提訴した。両社が家賃滞納時の「督促手数料」(3000円)や退去時の退室立会費など法的根拠のない金銭の徴収を行なっていること、連帯保証人を立てられない入居者に対して「居住権がない」という記載のある一か月単位の短期一時使用契約を締結していたことに対して、入居者からの批判が高まり、入居者を支援する「住まいの貧困に取り組むネットワーク」は、2009年8月、これらの契約内容の改善を求める要求書を両社に提出した。こうした動きを受けて、東京都は2010年6月、シンエイエステートに対して宅地建物取引業法違反を理由に29日間の営業停止処分を科している。
 2  フォーシーズなどの家賃保証会社
 家賃保証会社は入居者から保証料を受け取る代わりに、家賃滞納時に貸主に家賃を代位弁済することを業務とするが、損失を抑えるために入居者の居住権を侵害して追い出し行為を行なうことも多く、「追い出し屋」の温床になっているとして批判が高まっている。中でも株式会社フォーシーズは悪質な取り立てで知られ、2009年2月、福岡簡易裁判所はフォーシーズが福岡市内の男性に対して午前3時まで取り立てを続けた行為に対して慰謝料の支払いを命ずる判決を言い渡した。また、フォーシーズは2009年1月まで、家賃を1回でも滞納すれば連帯保証委託契約を自動的に打ち切り、「再契約保証委託料」として一万円を入居者に支払わせるという契約書を使っていた。東京都豊島区内に暮らす女性がこの契約が「公序良俗に反し違法だ」として、内容証明便で返還を要求したところ、2009年6月、一部が返還されている。
 こうした追い出し行為に対して、法律家で作る「全国追い出し屋対策会議」が全国各地で相談活動、家賃保証会社等に対する損害賠償請求訴訟を行なっている。
 追い出し行為に対する世論の高まりを受けて、政府は2010年2月、悪質な家賃の取り立てから賃貸住宅の入居者を保護する新法案、通称「追い出し屋規制法」案を国会に提出し、4月には参議院を通過した(2011年1月末現在、衆議院で継続審議となっている)。一方、家賃保証会社の協会は家賃滞納履歴のデータベース作成を開始し、家賃滞納歴のある入居希望者が民間賃貸住宅市場全体から締め出される危険性が懸念されている。
 3  野宿者を狙う宿泊所ビジネス
 民間賃貸住宅の入居者だけでなく、ホームレス状態にある生活困窮者をターゲットにした貧困ビジネスも跡を絶たない。その手法は、公園等で野宿者に声をかけて宿泊施設に囲い込み、生活保護を申請させて、保護費の大半を食費・宿泊費名目で徴収するというものであり、公的な宿泊施設の不備を突く形で大都市圏を中心に広がっていった。
 2009年10月、千葉市内の宿泊所の元入所者が生活保護費を横領されたとして、NPO法人厚銀舎の飯島利夫代表を告訴した。告訴状によると代表らは銀行口座を開設するため、本人が書くべき「生活保護受給証明書」の申請書を同意も得ず作成、押印し、稲毛区役所に提出して証明書を入手したと言う。飯島代表は、関連団体FISの脱税事件で2010年3月に名古屋地裁で有罪判決を受けている。FISは首都圏を中心に約20ヶ所の宿泊施設(総定員数約2000人)を運営しており、依然から不透明な資金の流れが指摘されていた。
 2011年1月には、東京を中心に14ヶ所の宿泊施設を運営しているNPO法人東京サポートセンターの理事兼事務局長の男性が数年間にわたり、元入所者2人の生活保護費計約1180万円を着服していたと、生活保護の実施機関である八王子市が発表した。代理受給のための委任状を偽造していたものとみられており、八王子市は刑事告訴する方針である。
 これらの事例にみられるように、宿泊所ビジネスでは入所者の身柄が施設内に囲い込まれているために、保護費が本人の手に渡らないよう書類が偽造されてしまうケースが散見されている。また、劣悪な居住環境や食事の対価として高額の食費・宿泊費を保護費から差し引く契約内容にしてあるなど、合法性を装っているために行政機関も問題を認識しながらも放置してしまっている事例も多い。
 こうした宿泊所ビジネスの中には、社会福祉法に基づく無料低額宿泊施設の届け出をしているものと無届けのものがあり、また届け出の有無にかかわらず、生活保護受給者を対象とする宿泊施設の中には良心的な運営をしているものも混在している。こうした状況が規制の実施を困難にしている面がある。
 2009年3月に火災が発生して10名の生活保護受給者が死亡し、安全管理を怠っていたとして2010年2月に理事長と施設長が逮捕された「静養ホームたまゆら」(群馬県渋川市)のように、高齢の生活保護受給者をターゲットにした貧困ビジネスも近年見られるようになった。こうした高齢者施設の多くは、本来の生活保護の実施機関から遠隔地に設置されているため、そのことがさらに問題の露見を困難にしている。
 4  生活保護費を搾取するアパート
 2010年以降に判明した新たな貧困ビジネスの手法として、野宿者をアパートに住まわせた上で、その生活保護費の大半をピンハネする団体の存在が明らかになっている。千葉県内に展開する「シナジーライフ」という団体は、千葉県内や東京都内で野宿者に「生活保護が受けられ、3食も大丈夫」などと声をかけ、千葉市内でアパートを借りさせた上で生活保護費を申請。月4〜5万円の家賃の他に、5万円程度を食費などの名目で徴収していたが、食料は月に白米が10キロ届けられるだけであったという。被害者は約200人いると見られており、2010年2月以降、8人の入居者らが損害賠償請求訴訟を提起している。
 住まいのない生活困窮者にアパートを斡旋して入居させ、生活保護費から高額の家賃や弁当代を徴収する業者は関西では「囲い屋」と呼ばれており、法律家らによる「関西囲い屋対策会議」が被害の掘り起こしを行なっている。大阪市は、「囲い屋」を生活保護申請の入り口で排除するため、住まいのない生活保護申請者に公的な施設を提供するなどの支援を2010年4月から実施している。
 このように貧困ビジネスの業態は様々であるが、共通しているのは「安心できる住まいが欲しい」という生活困窮者の正当な欲求を業者が悪用している点にある。「貧困ビジネス」であるとの批判に対して、こうした業者は「敷金・礼金無しで住まわせてやっているのだから、契約内容に文句を言うな」「保証人になってやっているのだから、我慢しろ」「屋根があるところに住まわせてやっているのだから、野宿よりマシだろう」と主張するのであろう。
 そうであれば、批判の矛先は個々の業者だけでなく、こうした業者の温床となっている社会の構造にも向けなければならない。
 その構造とは、多くの生活困窮者にとって「安心して暮らせる住まい」へのアクセスが阻害されていることである。具体的には、住宅行政において公的住宅政策が貧弱であること、民間賃貸住宅市場において入居差別が野放しになっていることやアパート確保のために高額な家賃や初期費用を要求されること、生活保護行政において「居宅保護」の原則が徹底していないことなどがある。
 これらの問題を「住まいの貧困」の問題として一体的に捉え、政府に住宅政策の転換を求めていくこと。居住系貧困ビジネスの告発や規制強化を求める運動とともに、「住まいの貧困」そのものの解消に向けた運動をしていくことが求められている。
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2017年12月17日

「生活扶助基準」切り下げに算定根拠があるのか?

 2013年5月、生活扶助基準が切り下げられたが、過去に例がないほどの下げ幅で、その算定に根拠がないのではないか。このため、全国各地で、切り下げの違法性、違憲性を訴える訴訟が起きている。
 憲法25条は、「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利を保障し、これを実現するため、生活保護制度がある。問題となっている生活扶助は、住居費や教育費以外の日常生活費用を援助するもので、給付額は厚生労働相が定める基準による。その決定は、恣意的であってはならない。判例・通説は、合理的な根拠・資料なしに基準を定めるのは違法・違憲ではないのか。
 制度発足当初、生活扶助基準は「マーケットバスケット方式」により決定され。これは、最低限度生活に必要と思われる物品とその数量をリスト化し、その物品の平均的な価格を積算して、基準額を定める方式である。しかしこれには、最低限度生活に必要な物品の選択が恣意的になりやすいとの欠点がある。
 そこで、1984年より、「消費水準均衡方式」が採用されるようになった。これは、各世帯の消費支出を調査し、「一般世帯」、「収入下位20%の一般世帯」、「生活保護世帯」の数値を比較し、その均衡を図りながら基準額を定める方式だ。
 13年の切り下げに当たり、厚労省は新たに、@「収入下位10%の一般世帯」の消費支出との均衡、A2008年から11年にかけての物価下落率4・78%を加味すること−とした。しかし、これらはまったく切り下げの根拠にはならない。
 まず、現状、生活保護制度の捕捉率は20%程度と言われており、「収入下位10%の一般世帯」には、生活保護を受給する資格があるのに、受給できていない世帯がかなり含まれている。にもかかわらず、生活扶助基準を「収入下位10%の一般世帯」に合わせたら、基準額は際限なく低下してしまう。
 また、4・78%もの物価下落は、総務省が長年使ってきた指数ではなく、厚労省が引き下げに際して独自に算定したものなのだ。この指数については、比較の基準年と考慮品目のウエートを恣意的に操作しているという指摘がある。具体的には、テレビやノートPCなどの電化製品の価格下落が不当に大きく反映され、極端な物価下落を示す数値になっているという(白井康彦『生活保護削減のための物価偽装を糾す』)。
 さらに、仮に4・78%もの極端な物価下落があれば、当然、一般世帯の消費支出の金額も大きく低減するはずなのだ。つまり、物価の上昇・下落は、消費水準均衡方式の採用自体によって、すでに基準額に反映されているはずだ。それに加えて、さらに物価下落を基準額算定に反映させるのは、物価下落の二重計上になってしまう。そうすると、物価下落を考慮すること自体が、計算を不正確にしてしまい、不適切なのだ。
 もちろん、社会状況によっては生活保護基準額を下げるべき場合もある。しかし、13年の切り下げは、合理的な資料・根拠に基づくものとは到底言えないのである。生活保護バッシングの風潮に便乗した、不当なものだったのではないか。生活保護は、生活困窮者の最後のとりでであり、憲法が保障する権利であることを考える必要があるはずである。
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2017年12月15日

「自立」とは、経済的自立?

 建屋内の案内は、英語・中国語(簡体)・ハングル・中国語(繁体)が併記されている。
 「○○市の福祉事務所では、生活保護廃止(生活保護からの脱却)に至る人数に年間ノルマが課されていて、『自立指導』という名目での強引な就労指導が行われている」
 といった風聞は後を絶たない。
 しかし、江戸川区の担当者に率直に尋ねてみたところ、
 「江戸川区では、そのような数値目標は設定していません」
 という答えが、即座に返ってきた。逆に
 「ご自分の考える『生活保護からの自立』って、何ですか」
 と問いかけられた。
 たとえば、障害者で車椅子等の補装具を必要としているとすると、「障害者の自立」とは、補装具が不要になることではない。このケースにとっての生活保護費は、障害者にとっての補装具と同じと考えていいいのではないか。でも、この考え方は、「生活保護は甘え」という主張の持ち主に受け入れられるだろうか。
 返答に窮してしまった。すると、担当者は、
 「私たちは、自立を3つに分けて考えています。経済的自立、日常生活の自立、社会生活の自立。まず、1人ひとりに合わせた、その段階での『自立』を考えます。各ケースワーカーも考えますし、担当チームや係でも話し合います」
 と言う。
 「経済的自立」は、生活保護水準以上の収入が得られる就労をすれば実現できる。しかし、無理にそのような就労を目指すと、せっかく就職しても短期間で心身の健康を害するかもしれない。
 「日常生活の自立」は、経済的自立の前提条件でもある。たとえば、精神疾患を持つケースのうち相当数は、引きこもって昼夜逆転した生活をしている。これでは、通院もできない。この段階での目標は、まず「昼間起きていられること」になる。
 「社会生活の自立」は、生活するために必要不可欠なことである。たとえば介助の必要な重度障害者にとって、「自分の意志を表明する」「支援者とのコミュニケーションを取る」は、生存を維持し、少しずつでも生活の質を高めていくために必要なことである。
 人間が1人ひとり異なる以上、個人の特性を無視した画一的な「自立指導」は成立しないのだ。
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2017年12月13日

生活保護受給者を減らすための課題と対策

 生活保護受給者の増大要因は、生活保護制度そのものに問題があるというよりは(もちろん入りにくく抜けにくいなど制度自体の問題もあるが)、生活保護を取り巻く周辺制度のもろさが問題である。したがって、生活保護受給者を減らすためには周辺制度の充実が不可欠だ。その具体策として、@最低保障年金の創設、A失業給付の強化と就労支援の強化、B就学援助、奨学金の充実を提案する。新鮮味はないが、これらが最適ではないか。
 @最低保障年金は、文字通り最低生活を保障する年金である。月額66,000円の年金ではとても生活できない。そこで、住宅費なども含めた必要最低限の生活ができる金額まで受給額を引き上げることで、高齢者の生活保障をすることが重要だ。そもそも生活保護の目的は「自立の助長」であるが、現在の制度は高齢者も若者も労働者もすべてを抱え込んでしまっている。「自立の助長」を目的としている制度の中に、稼働能力のない高齢者を含めてしまうのは根本的に矛盾している。こうした矛盾をなくすためにも、最低保障年金の創設は重要である。一方で、経済的に余裕のある高齢者に関しては年金支給額を減額する措置も考えるべきだ。社会保障を考える上では財源についても検討しなければならず、日本の財政状況を勘案すれば余裕のある高齢者にまで貧しい高齢者と同額を支給する余裕はない。そこで、財源を保険料ではなく税金とすることで負担と給付の関係を不明確にし、貧しい人を社会全体で支え合う再分配的要素を強くした制度設計を確立すべきだと考える。また、そもそも保険料を払わない、もしくは払えない人が増えているのだから、年金制度を持続可能にする上でも税による調達のほうが効率的ではないか。
 A失業給付の強化と就労支援の強化も文字通りである。1年以上の長期失業者が増大しているにもかかわらず、最長でも330日までしか失業給付が受け取れない状況は、現状に即した給付要件とは言えない。加えて、雇用保険に加入していない人は失業給付を受け取ることすらできない。ここでも財源を税金とすることで失業した場合には誰でも受け取れる制度を確立するというのも、議論の余地があるのではないだろうか。変化の激しい現代だからこそ、いつ、誰が失業するかはわからないので、社会全体で支え合う制度設計が求められているように思う。
 Bは就学援助、奨学金の充実である。教育に関しては、もはや財源云々の問題ではないと考える。教育は生活保護を抜け出すための手段にとどまらず、国の根幹を作り上げるものだからだ。子供の自己責任とは言えない経済的な理由から、教育の機会均等を奪うようなことは決してあってはならない。貧困の連鎖を断ち切るという目的に加えて、教育は未来の人材への投資と考えて、今すぐにでも就学援助、奨学金は充実させるべきだ。
 一方で私は教育に関してはすべて無償化がベストだと考えている。未来の人材への投資という点から言えば、年金と違って教育は経済力にかかわらず全員に恩恵をもたらす必要があるからだ。しかし、実現可能性を考えると現状ではかなり難しそうなので、少なくとも経済的理由で進学ができないということがないよう、就学援助、奨学金の充実を提案する。民主党政権下での、子供は社会で育てるという理念の下、所得制限なしで現金を渡した子ども手当は、私は一定の意義があったと考えている。これに修正を加えながらの発展を望んでいたのだが、旧来の所得制限ありの児童手当に戻るようなので残念だ。この点が今後の課題だと考える。
 以上3点が私の考える受給者を減らす対策である。これが完璧であるとは到底思えないが、それなりの効果は上げるのではないか。
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2017年12月12日

生活保護受給者増大の背景と問題点

 生活保護受給者増大の背景には、生活保護制度そのものの問題点だけではなく、生活保護を取り巻く周辺の制度との関係の中で、いくつかの要因が存在する。
 生活保護受給者増大の背景を考える上での足掛かりとして、まずは受給者の構成について確認する。国立社会保障・人口問題研究所のデータによると、2010年度の受給者の構成比は、「高齢者世帯」が42.9%、「母子世帯」が7.7%、「傷病者世帯」が21.9%、「障害者世帯」が11.2%、「その他の世帯」が16.2%となっている。このデータから受給者の半数近くが高齢者世帯だということがわかる。
 ではなぜ、高齢者世帯の受給者が多いのか。それは不十分な年金制度が関係していると言える。日本年金機構HPによると、老齢基礎年金を満期の40年間納めた場合の受け取れる金額は、平成24年度で年額786,500円、月額では約66,000円である。これには住宅費や医療費、介護費などは加味されていないので、最低生活保障が困難になっている。そもそも年金制度自体の趣旨が老後の生活すべてを賄うようには設計されておらず、あくまで食費を中心とした老後の生活の「基礎部分」を賄うものと考えられている。したがって、年金とは、かつての所得の一部を支給することを目的としているので、最低限の生活を保障するものではない。このように年金制度が最低限の生活を保障するものではないために、今まで働いてきた分の貯蓄が十分でない高齢者が退職した後に最低限の生活ができずに生活保護へ流れるという構図ができている。
 年金との関連で言うと、近年の国民年金の納付率の低下も重要だ。要因としては年金制度に対する不信や、そもそも保険料が支払えないワーキングプアの増大が考えられる。国民年金の納付率が低下するということは、年金の受給できる額が減額、または無年金という状況も考えられる。こうした状況の人々が増えれば、生活保護受給者が増大するのは必然と言える。以上が一つ目の受給者増大要因である。
 次に検討するのが、雇用と生活保護受給者増大の関連である。不安定な非正規労働者の拡大も、生活保護受給者を増大させる要因となっている。かつての日本においては、日本型雇用と呼ばれる終身雇用が第一のセーフティネットの役割を果たしていたが、近年の非正規労働者の増大によって、終身雇用というネットはもろくなっている。こうしてもろくなった雇用からこぼれた人を受け止める失業給付も受けられる人が減っているのが現状だ。
 具体的にみていく。雇用と関連する生活保護受給者増大の背景としては、経済の低迷に伴う失業者の増加がある。国立社会保障・人口問題研究所によると、2008年以降「その他の世帯」が増大している。「その他の世帯」とは、働きながら生活保護を受けている母子世帯を除いた世帯がそれに当たる。すなわち働く能力のある失業者が生活保護受給者になったことを示す。「その他の世帯」は08年に10.6%であったが、09年には13.5%、10年には16.2%と増大している。リーマンショック以降の経済低迷で、多くの非正規労働者が派遣切りに遭った結果である。本来ならば失業した場合は雇用保険がセーフティネットの役割を果たし、失業給付が受けられるはずだが、非正規労働者の中には雇用保険に加入していないために失業給付が受けられず、直接生活保護を受けることになる。
 最近では長期失業者が増大していることも生活保護受給者を増大させる要因となっている。本田良一氏によれば、1990年時点では失業者のうち1年以上の長期失業者は19.1%であったが、2007年には32.0%に達するという。このように一年以上の長期失業者が増大しているにもかかわらず、失業給付の期間は原則として最長で330日なので、失業給付からこぼれて生活保護を受けるという形になっている。以上のように、非正規労働者が増大することによって雇用というセーフティネットからこぼれる人が増えたこと、雇用のセーフティネットからこぼれた人を支える失業給付が貧弱であるというダブルパンチによって、生活保護を増大させていることが言える。
 次に検討するのが貧困や教育、学歴の関連である。貧困や教育、学歴は密接に関連している。週刊ダイヤモンドに掲載されている大阪府堺市健康福祉局理事の調査によると、生活保護家庭の4分の1は世襲である。具体的に見てみると、全体のうち、過去に育った家庭も受給世帯の割合は25.1%で、母子家庭に至っては40.6%である。また、全体のうち世帯主が中学卒の割合は58.2%である。
 別のデータもある。これも同じ週刊ダイヤモンドに掲載されているもので、父の学歴によって子の収入も変わることを示している。具体的に見ると、父が大卒の場合の子の収入は、年収650万円以上が5割弱を占め、年収300万円未満は2割弱にとどまる。一方で父が中卒の場合の子の収入は、年収650万円以上は3割弱に過ぎず、年収300万円未満は2割強である。また、就学援助率と学力の関係を表すデータもあり、就学援助率が高い地域では学力調査の平均点が低いという結果が出ている。これらがいわゆる貧困の連鎖だ。
 では、貧困の連鎖を断ち切るための有効な手段とは何か。それは前述した父の学歴と子の収入のデータから見れば、学歴であると言える。
 ところが、日本の場合は教育費が非常に高いため、経済力の差によって教育機会の不平等が生じてしまっている。OECDが公表している『図表でみる教育 OECDインディケータ(2011年度版)』によると、日本の教育支出を占める私費負担の割合は、学校教育段階全てにおいてOECD平均を上回っている。ここでは高等教育(大学)について具体的に見てみる。日本では、私費負担全体で66.7%、そのうち家計負担は50.7%である。データの中で最も負担が低かった国のフランスを見てみると、私費負担全体で18.3%、そのうち家計負担は9.6%である。授業料で比較すると更にわかりやすい。『週刊エコノミスト 2012年8月13日号 大学生の授業料・奨学金に関する国際比較』によると、フランスの国立大学の授業料は年間1.8万円。一方の日本の国立大学は年間53.6万円、これに加えて入学金28万円を支払う。このように、日本の教育費、特に高等教育費が非常に高いために大学進学がかなわず、家庭の経済力の差によって教育機会が不平等となることで子どもの将来格差も生み出す貧困の連鎖が確立されてしまっている。こうした状況は、生活保護受給者の増大要因というよりは、世代を超えて生活保護受給者が再生産され、貧困から抜け出すことが困難であるという点で問題を認識すべきである。
 
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2017年12月11日

ホームレス排除とボランティアの努力

 ある人物の文章を読んだ。以下は彼の文章からまとめたものである
 アメリカといえば多数のホームレスを思い浮かべる方も多いであろう。ボストンでも数多くのホームレスを見かけた。大量の荷物を持ち運んでいる姿や、しばしば生気の乏しい表情、何よりも、ビルの前でドアを開けては金銭を乞う行動などから、「この人はホームレスなんだ」と明確に分かる。
 とはいえ、そのホームレスたちが、服や身体から異臭を漂わせていることは非常に少ない。多くは、小ざっぱりとした身なりをしている。頭も身体も、清潔に保たれている印象を受ける。彼が何人かのボストン在住者に聞いたところ、
 「シェルターがあって、食事を食べられたりシャワーを浴びられたり、清潔な服をもらえたりする」
 という話である。
 「シェルターは全く足りていない、なにしろホームレスは増え続けているんだから」
 と語った。彼女は、ボストン在住のサイエンス・ライターである。彼女をはじめとするボストン在住者たちに聞いた話を総合すると、単身のホームレスがシェルターでシャワー・食事・清潔な服などの提供を受けられるのは事実なのだが、ホームレス全員が寝泊まりできるほどのシェルターはない。数日に一度、シェルターが利用できれば幸運、という感じであるらしい。
 彼女は、
 「空き地でキャンプしたり、公園で寝泊まりしているホームレスを、警察は排除しつづけていて、それは大きな問題になってる。日本でも同様の問題はある」
 と尋ねてきた。かれは、現在進行形の問題として、東京都江東区堅川での野宿者排除問題について話した。そして、
 「そのエリアは、成田空港から東京方面に『成田エキスプレス』で行くときに通過する場所だから、河川敷や空き地を見かけたら『ホームレスが排除された場所かも』と思ってみて」
 と補足した。話しながら、
 「何か、自分が心から『日本の誇り』と思えることを話せればいいのに」
 と思ったが……「日本の」という括りで答えられることは、何も思い浮かばない。お笑い芸人の母親が生活保護を受給していたことに端を発した「生活保護バッシング」。勇気をもってデモや記者会見に臨む当事者たちにネット上でぶつけられた誹謗中傷の数々。どれ1つ取っても、「日本人として恥ずかしいから、外国の人には、話さずにに済むなら話したくない」と思ってしまうようなことがらばかりだ。
 彼女はまた、ボランティアとして支援活動に参加しているとも語った。過去、ホームレスが販売する雑誌として知られる「The Big Issue」の編集・執筆に関わっていたこともあるという。彼が、
 「同じ雑誌が日本にもあるよ」
 と答えたら、笑顔を浮かべてくれた。よかった。「日本の誇り」までの大風呂敷は広げられないけれども、日本のポジティブな側面として伝えられることが1つはあったということである。
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2017年12月10日

日本の生活保護基準は「米国並みに下げる」べきか?

 日本の生活保護基準は、金額を国際的に比較した時には、決して世界的に低い水準にはない。日本よりも高い国を探すほうが大変なほどである。このことを根拠に、
 「日本の生活保護基準は高すぎるから、引き下げて先進諸国並みにすべき」
 という意見が数多く見られる。このとき、金額以外の要因が考慮されることは少ない。
 また、日本の捕捉率(注)は、決して高くない。このこともまた、
 「1人当たりの生活保護水準を引き下げれば、必要な人が全員、生活保護を利用できるようになる」
 という主張の根拠とされる。たとえば日本の捕捉率が20%であるとすれば、生活保護費の総額を変えずに貧困状態にある国民全員に扶助を行うためには、生活保護費を現在の20%まで引き下げればよい計算になる。
 このとき、引き下げてよい根拠としてしばしば引用されるのは、アメリカの制度である。
(注)公的扶助を利用している人数を、貧困状態にある人数で除したもの。日本では、20%前後と推定されることが多い。
 たとえば、「アメリカの公的扶助では現金給付はなく現物給付が主である」と言われる。確かに、アメリカの制度を見てみると、一般には「フードスタンプ」と呼ばれる「SNAP(補助的栄養支援プログラム)」をはじめとして、購入可能な品目を限定したICカード・食事そのものの無料提供・家賃補助・医療保険など、現物支給と考えても支障なさそうな扶助メニューが目に付く。
 一方で、アメリカの捕捉率は高く、約60%と言われている。現金給付である「TANF(貧困家庭一次扶助)」では、金額は1家族あたり年間8000米ドル程度と低く抑えられている。また、5年間の有期制であり、就労訓練・ボランティアが義務付けられている。これらの事柄をもとに、
 「日本においては生活保護基準を切り下げて有期制にすることが、公的扶助の捕捉率向上へとつながり、さらに当事者の就労自立へのモチベーションとなる」
 という主張がされる場面も多い。
 個々の社会保障制度の意味を性急に判断できるほど、筆者はアメリカの貧困事情や貧困政策に詳しくない。英語力も、踏み込んだ取材を英語圏で不自由なく行えるレベルに達しているわけではない。しかし日常的に、「アメリカでは」という主張は要警戒である、と感じている。現地の風土、現地の文化、現地の社会の生態系と切り離して、1つの制度の1つの側面だけを「……では」と取り上げることには、多くの場合、意味はまったくない。
 たとえば2011年、アメリカの公的扶助のうち食事・住宅・医療に関する上記の5つのメニューに必要であった費用の合計は、5077.8億米ドルであった。「1米ドル=95円」とすれば、48兆円である。人口を考慮しても、日本の生活保護費の約3倍程度の規模ではありそうだ。ここから「日本の生活保護制度は、そもそも予算不足すぎる」という結論を導くことも可能である。
 なお、これらの制度はアメリカ全土に適用される最低限度のものである。実際にはこれらに加え、州や各自治体が独自に提供している制度もある。制度により所得制限などの条件が異なり、したがって利用人数が異なるため、日本の生活保護制度のように1人あたりの金額を単純に算出することはできないが、少なくとも金額だけを見る限り、日本に比べ、かなり充実している感じを受ける。
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成長する新興国が先進国の雇用を奪う

 格差や貧困の直接の原因は長期化する世界不況だが、今回の不況の特徴は財政・金融政策がほとんど効かないことだ。
 企業業績は持ち直したが雇用は回復せず、アメリカの失業率は9%を超えた。この原因は一過性の景気循環ではなく、構造的な自然失業率が上がったからだ。アメリカの自然失業率は7.5%と推定されており、景気対策でこれ以下に下げることはできない。
 構造的な失業が常に生みだされる1つの原因は、新興国との競争が激化したことだ。特に製造業は新興国に生産拠点を移し、米国内の雇用は減っている。1990年以降、アメリカで創造された2700万人の雇用のうち、実に98%が非貿易財(国内のサービス業)によるものと推定されている。
 製造業で職を失った労働者は、流通や外食のような海外と競合しないサービス業に移る。サービス業は労働集約的で労働生産性が低いので、賃金も低い。GM(ゼネラル・モーターズ)で働いていた労働者が失業し、ウォルマートに再就職して賃金が半分になる、といった形で平均賃金が下がったのだ。
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2017年12月08日

日本の貧困率増加とその元凶

 厚労省が公式発表している日本の貧困率は、年々増加の一途をたどっており、足下では16%の世帯が、貧困層に分類されている。
 この貧困の定義はOECDで定められた統計的な基準によるものであるが、具体的には、日本の場合、世帯当たりの手取り収入で240万円、労働者一人当たりで120万円がそのボーダーラインとなる。ちなみに意外かもしれないが、日本のこの16%という貧困率は、加盟34ヵ国のうちメキシコ、トルコ、米国についで、第4位という不名誉な状態にある。
 さらにこれを性別・年齢別にわけて、それぞれを時系列で見ていくと、日本社会のゆがみが見えてくる。直近20年の変化では、24歳以下の男女の貧困率が大きく上昇(約+10%)する一方で、65歳以上の男性の貧困率は大きく低下を見せている。つまり、すでに社会問題となっているように、若者世代の困窮が、数字の上でも確認される状態となっている。
 この要因の1つとしては、これまでの不況や、それによる就職難、非正規社員の拡大などがある。しかし、あまり知られていないが、もっと大きな理由としては、政府による所得の再分配が、まったくと言ってよいほど機能していないことが、この問題の根底にある。
 OECDのデータを見ると、日本は政府による所得の再分配による貧困層への支援効果が、全加盟国の中で最も低い国となっている。さらに酷いことに、貧困世帯の子供あたりの再分配効果に関しては、加盟国で唯一のマイナス効果となっている。つまり、日本政府は貧困家庭の子供から、富を奪っている、世界で唯一の国ということである。
 日本では、かって生活保護制度のあり方について世論をにぎわせたが、世界中の国を見ても、日本ほど貧困層に対する支援が少ない国はない。一億総中流と言われる国民性のせいなのか、政治家が有権者の票を意識しすぎているのか、日本政府は税の取り方が下手なだけではなく、その使い方も下手であることは明白である。
 最新の世論調査では「景気回復を実感していない」と答えた人は78%と非常に高く、アベノミクスによる景気回復施策の恩恵は、国民全体で見ると、まだまだ行き渡っていないことがわかる。アベノミクスも、大部分の有権者も、上昇しつづける貧困率を止めることには、まだまだ関心がないようだ。
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2017年12月07日

高齢者が生活保護を受けるには? 高齢者が生活保護を受けるには?

 日本の生活保護受給者のうちの4割を占めるのが高齢者であり、現在で約80万人近くの65歳以上の高齢者が受給している。だからといって、高齢者のすべてが無条件で生活保護を受けられるわけではない。
 高齢者が生活保護を受ける条件高齢者であっても、生活保護の受給を前に、換金できる資産を所有していれば売却するなどの方法で生活費に充てることが優先される。 資産として当てはまるのは、土地不動産・預貯金・生命保険・自動車などが挙げられる。
 高齢者が生活保護を利用する前に、シルバー人材センターや、高齢者でも働ける事業などを活用し、能力に応じて収入を得ることが前提となる。
 また、高齢者世帯が生活保護を利用するとき、子供や兄弟姉妹、または親戚などからできる限りの援助をお願いすることが求められる。生活保護法で定められている扶養義務者は申請者本人からみて三親等まで。ご両親は存命でない場合が多いので、現実的には子供・兄弟からの援助を求めるのが一般的だ。
 さらに、生活保護制度以外の他の法律や制度による給付がある場合、それを優先して受給して生活費に充てることが求められる。
年金を受給している場合は、足りない生活費を生活保護で補うことになる。「年金を受け取っているのに、生活保護の申請はできないのでは…」と考える人もおり、そのため、申請自体を諦めてしまうケースもあるが、年金をもらっていても生活保護を申請することができる。ただし、受給している年金が生活最低基準に達しない場合に限られる。1ヵ月単位で計算された年金は収入として認定され、その他の収入と合わせても最低基準を超えなければその差額分が支払われることになる。つまり、生活保護と年金を併用しても最低基準以上の収入を得ることはできないのだ。
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2017年12月06日

助けを求めやすい世の中にしよう!

 根本的に大事なのは、社会の空気を変えることである。強くなければダメだ、辛抱しろ、弱音を吐くな、他人に頼るな、甘えるな、周囲や社会に負担をかけるな――。そういった考え方は家庭教育、学校教育、社会風潮の中で植えつけられてきたものなのだ。
 助けを求めることは、社会に存在する「資源」を使って、個人の問題解決を図るための行動である。その意味で、困ったときに助けてと言えるのが本当の強さなのではないか。
 政府・自治体は、助けを求めやすい世の中、弱さを認め合える社会の実現に向けて、困ったときは遠慮なく助けてと言おう、というキャンペーンを行うべきではないか。
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2017年12月04日

積極的な福祉行政が求められている?

 何が必要なのか。まず行政や福祉関係者が、苦境にある人の心理をよく理解し、個別の相談支援をきちんとやること。積極的に手を差し伸べ、ともに問題解決に取り組むこと。相談や申請への対応が親身でないと、困っている人の希望を奪い、逆に打撃を与えてしまうのである。
 制度や仕組みの周知も重要です。制度の内容が見えないと、当事者には助けを求める発想が浮かばない。「何かあればご相談を」「詳しくはお問い合わせください」といった抽象的な広報だけではなく、「こんな制度があります」と具体的な情報が、困っている人にとっては手がかりになる。とりわけ生活保護の必要な人に利用を促す広報は不足している。
 自分から助けを求められない人にアプローチするには、受け身で相談を待つだけではなく、積極的に現場へ出かけるアウトリーチ活動や、地域住民との協力関係も必要なのだ。
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2017年12月03日

福祉行政がパワハラ、追い討ち

 貧困も否定的に見られがちだ。貧困に陥るのは、本人の生活態度だけの問題ではなく、生まれつきの能力や育った境遇をはじめ、病気・障害・災害・失業・離婚といった不運によることが多く、決して恥ではないのだが、社会には金持ちをもてはやし、貧しい人をさげすむ風潮がある。
 そして生活保護には、強いスティグマがつきまとっている。健康で文化的な最低限度の生活は憲法で保障された権利であって、必要なときは利用すればいいのに、行政の世話になることを恥や負い目と感じる人が多いのが実情である。
 さらに問題なのは、実際の行政の対応である。生活に困り果て、精神的に弱った状態で、勇気をふりしぼり、やっとの思いで出向いた福祉事務所。その窓口で冷たくあしらわれたり、ケースワーカーから心ない言葉を受け、責められたりした事例はいくらでもある。福祉行政によるパワハラや、二重の心理的加害なのである。
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2017年12月02日

恐怖、恥の意識、自責感情、責められる不安

 性暴力やセクハラを受けた人は、被害を訴えにくいものである。加害者への恐怖、恥ずかしいという意識に加え、被害に遭った自分を責めてしまいがちだ。周囲から自分を責めるような言い方をされたり、好奇の目にさらされたりするセカンドレイプもある。また、詐欺や悪徳商法の被害者は、だまされた自分を責め、恥ずかしく思い、周囲からも責められたりバカにされたりしがちなのだ。避難する場所や守ってくれる施策が求められる。生活保護制度もその1つ出なければならないのだ。
 DV(配偶者らからの暴力)や子供・障害者・高齢者に対する虐待では、加害者との力関係が問題になる。家庭内でも施設・事業所でも、一方が権力や支配力を持っているから虐待が起きやすく、被害者はそこから抜け出しにくいものである。再び被害に遭うこと、報復を受けることへの恐怖心もあれば、日常生活や経済面で相手に頼っている現実もある。加害者に対して、悪いだけではない、世話になっていて申し訳ない、自分にも非がある、と考えてしまうこともある。福祉行政の不備が指摘されるところでもある。
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2017年12月01日

「助けて」と言えないのはなぜか?

 生活に困ったときや精神的に苦しいときに、人はどうするだろうか。すぐにSOSを発するのか。大声で助けを求めるのだろうか。必ずしもそうではない。むしろ、苦しんでいる人は、なかなか声を出せず、簡単には助けを求めようとしない傾向がある。どんどん権利を主張する人、自分で制度をフル活用できる人は少数なのだ。ここを勘違いしていると、社会保障や福祉の仕組みがあっても、うまく機能しない。
 助けが必要な人は、どうして声を出せないのか。要因はいくつもある。本人が心理的に弱っていること、力を持つ者への恐れ、スティグマ(恥辱感、偏見)、自分を責める意識、本人を責める人が実際にいること、我慢して迷惑をかけないことを美徳とする道徳観――などである。近年は何かにつけて自助努力や自己責任が強調され、他者を責める風潮が強まっており、助けが必要な人が声を出しにくくなっているのである。
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新就労対策拡充が必要だが…?

 就労支援策として、これまで雇用保険を受給できない人を対象に、職業訓練とその間の手当を支給する「求職者支援制度」が実施されている。また、失業などにより住居を失った人などで就労意欲がある人を対象に原則6ヵ月間、賃貸住宅の家賃を支給する「住宅手当緊急特別措置事業(住宅手当制度)」も行われている。
 しかし、住宅手当制度は12年度末で終了しているため、求職者支援制度と合わせた新たな就労支援策の拡充が望まれるのである。
 社会的な孤立からの脱却には、個人の事情に応じた支援が必要。国は、若者の引きこもりなどに対応する「パーソナルサポート」のモデル事業を全国で展開してきたが、13年度以降については、生活困窮者対策に盛り込まれているが効果は薄い。また、NPOなど民間団体との連携で、試験的な就労などをサポートする体制の整備も議論されてきた、実効性に乏しいものばかりだ。
 しかも、安倍政権では、膨らむ生活保護費を抑えるため、段階的な給付削減をおこなっており。生活困窮者の支援策がどのようになるのか不安視されている。
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