厚労省が3年ぶりに公表した日本の貧困についての数値は、国民生活の厳しい現実を改めて裏付けている。貧困を示す国際的な指標である「相対的貧困率」は下がったとはいえ、17歳以下の子どもでは13.9%(前回16.3%)、全体では15.6%(前回16.1%)という結果となった。
相対的貧困率は、世帯の可処分所得などをもとに、その国で生活できる、ぎりぎりの「貧困ライン」(今回は年間122万円)を算出し、それ未満の所得しかない人がどれくらいの割合でいるかを示す指標である経済協力開発機構(OECD)が14年にまとめた36ヵ国の子供の貧困率は13.3%だった。日本の水準はそこにもなかなか到達できませんないのだ。子供の貧困をはじめ格差と貧困を解決することが、日本の政治と社会の優先課題の1つであることは明らかではないか。
とりわけ母子家庭など1人親世帯の状況は過酷。貧困率は50.8%(前回54.6%)で、なおも高水準である。調査では、母子世帯の82/7%が「生活が苦しい」と答えている。「貯蓄がない」と回答した母子世帯は37・6%にのぼり全世帯平均14.9%の2倍以上となっている。子供のいる世帯への経済支援をいっそう強める必要がある。
貧困問題はどの世代にとっても深刻だが、発達・成長過程にある子供時代の貧困は、健康や学力など子供に必要な条件が経済的困窮によって奪われるという点など影響は大きく、子供本人の人生だけでなく、社会全体にも損失をもたらす。
研究者や市民団体の粘り強い取り組みなどを通じ、子供の貧困対策法が成立し、地方自治体などで実態調査など改善への動きが多少始まっているが、安倍政権は貧困問題に真剣に向き合おうとせず、対策の立ち遅れが際立っている。世論と運動の広がりの中で、安倍政権は、1人親世帯への児童扶養手当の一部増額や、給付型奨学金の部分的導入を行ったが、あまりにも規模が小さく、事態の本格的な打開の道筋はみえない。