2017年09月22日

海外からの所得が増えている?

 対外資産の蓄積が進んだことも、労働分配率の低下を引き起こしている原因の1つと考えられている。日本では1980年頃から経常収支の黒字基調が定着した。これが毎年の金融収支の黒字となって海外に保有する資産の増加につながるので、長年、対外純資産残高の増加傾向が続いてきた。
 日本の対外純資産は名目GDP比でみても1967年末には0.7%の債務超過だったが、2014年末には純資産が77.3%にも達する規模に拡大している。こうした対外資産から得られる所得も増加しており、2014年度には海外との間の利子や配当の受払などの海外からの所得は名目GDP比で4.3%の黒字に拡大している。
 かつては経済活動を見る指標としては、GDP(国内総生産)ではなくGNP(国民総生産)が用いられていたが、三面等価の原理からGNPとGNI(国民総所得)は等しい。GDPは国内の経済活動水準を示す指標としては適切だが、消費や投資に使える所得を考える場合には海外からの利子・配当などの所得を含めたGNI(GNP)を見る方が良い。これは、資産家の世帯を考えれば働いて得る所得がほとんどなくても、財産所得が大きければ豊かだということと同じことだ。
 日本社会が豊かになったのかどうかという指標としてはGNIを見るべきなのだから、名目GDP比で8割近くにも達する対外純資産の収益性を高めることには大きな意味がある。
 経済政策の方向としてもGDPの動向だけではくGNIの拡大にもっと注意を払うべきだというのは確かで、安倍内閣が2013年に策定した「日本再興戦略」では1人当たりGNIを10年後には150万円以上増やすという目標を示している。
 海外への投資取引を考慮していないことも、資本と労働の間の分配率が一定となるという結果が得られる理由である。だから、近年の世界経済のように海外への投資が活発になっている状況では、労働分配率が一定になるとは期待できない。なぜなら、所得が賃金と資本に分配されると考えるのは、所得を得るためには労働と資本の両方が必要だからだ。
 しかし、海外から得られる財産所得は国内の労働を必要としない。例えば海外子会社から得られる配当が、日本にある本社で海外戦略を担っているような部門で働く人達の賃金に反映されることはあるだろうが、国内の工場などで働く人達の賃金にも分配されるとは考え難い。
 今後対外投資を拡大することで海外からの所得が増え、日本全体としては所得の増え方が速くなるはずだ。しかし、対外資産から得た所得が普通の労働者に賃金として分配されるとは考えにくく、国民所得の伸びを賃金の伸びが下回って、国民所得の中で賃金に分配される比率である労働分配率は低下していく可能性が高いだろう。
 大幅な経常収支黒字を続けているドイツなどを除けば、先進国の多くはそれほど大きな経常収支黒字を出しているわけではない。とくに米国は経常収支の赤字が続いていて、対外債務が対外資産を上回る純債務国になっているにもかかわらず、第一次所得収支は黒字が続いている。


posted by GHQ/HOGO at 07:17| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

政府債務の拡大も所得格差を拡大する一因

 政府債務が拡大していくことが、所得格差に及ぼす影響も懸念される。国債の残高が増えるとそれだけ家計の金融資産も増えることになるが、富裕層ほど多くの金融資産を増加させることになるからだ。
 財政破たんのリスクが高まれば、国債の金利は高くなるはずで、税で吸い上げられた所得が相対的に多くの国債を保有している富裕層により多く利子所得として分配されることになる。累進的な所得税制度がある財政には所得再分配機能があるはずだが、格差を抑制する効果は弱まってしまうのではないか。
 子、孫と子孫が遺産を分割していくので大金持ちの資産は分散して行き、貧しい人達も資産を蓄積して豊かになって、両者ともに平均に回帰すると期待したい。しかし親の成功の結果は普通に考えられているよりも長く子孫に受け継がれているようだ。グレゴリー・クラーク(1957-)が各国の長期に渡る苗字と職業や所得との関係を研究したところでは、社会階層間の移動は意外に遅いという。
 例えば社会の流動性が高いと考えられているスウェーデンですら、医者や法曹界などで特定の姓が人口中の比率よりも長期にわたって高い比率を維持しているという。相続などを通じて世代を超えて格差が固定化されて、どこかで限界を超え、大きな社会的な混乱を引き起こしてしまうのではないだろうか。
posted by GHQ/HOGO at 07:17| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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