2017年08月25日

経済成長は格差是正の万能薬ではない

 ピケティ氏が著書「21世紀の資本」の中で示した【r>g】(資本収益率>経済成長率)という法則に沿えば、ある国の経済成長率が低下すると、その国で資本を持つ者と持たざる者の格差は広がることになる。逆にいうなら、格差を縮小するためには経済成長が必要になるわけである。日本における低所得者の増加が長期の経済停滞によってもたらされたものならば、経済成長が日本の格差是正につながると考えるのは自然な流れかもしれない。
 しかしながら経済成長と格差の関係はそれほど単純なものではない。エマニュエル・サエズ教授と森口千晶教授の研究によると、日本で過去に実現した高成長は、第2次大戦前と戦後ではその環境要因が異なる。要約すると、1890年〜1938年の急成長は資産家と財閥系大企業を中心とした「格差社会」の中で実現し、55年〜73年の高度成長は近代的な日本型企業システムによる「平等社会」の中で実現したというのだ。これは経済成長と格差の関係が一意的に決まるものではないことを示唆している。
 おそらく経済成長は格差是正の万能薬ではないし、格差が絶対悪というわけでもない。ピケティ氏も語っているように、イノベーション(革新)や人々のやる気を引き出すうえで、ある程度の格差は必要なのかもしれない。ポイントは、格差が長期にわたって固定されないよう、社会全体で気を配ることではないか。
 その意味で、日本の格差問題について議論する際には、日本人の意識やライフスタイルの変化にも注目すべきだ。いささか厳しい見方をするならば、低所得の高齢者や母子家庭の増加は、核家族化の進行や結婚観・離婚観が多少なりとも影響していると考えられる。若年層の失業や非正規雇用が増えているのも、昨今の若者意識と無関係ではないだろう。
 専門家からはこうした貧困層の固定化を防ぐために、富裕層だけでなく中間層も含めた日本社会全体の負担増が欠かせないという声が上がっている。その場合、単なる財源負担にとどまらず、教育や地域での支え合いなどソフト面から貧困に対処する施策も求められてくるはず。経済成長が重要なのはもちろんだが、本当に成長すべきは人間社会のほうなのかもしれない。
posted by GHQ/HOGO at 07:07| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする