早朝にボストン市街を移動していて、食欲をそそる匂いに鼻をくすぐられることがある。肉やチーズと思われる美味しそうな匂いが漂ってくる方向を見ると、たいていは炊き出しが行われている。ホームレスを含めた貧困層の人々が並んでいたり、食べ終えて談笑していたりする。
並んでいる人々の中には、障害者の姿が目立つ。日本の障害者は、職を得ることも継続することも困難なゆえに、ホームレスになったり、最初から受刑を目的として軽犯罪を犯したりする以外の選択肢をなくすことが多い。日本とは障害者に対する考え方や障害者福祉制度がかなり異なるアメリカだが、そのあたりの事情はあまり変わらない。
これらの炊き出しの情報は、炊き出しを行なうNGOなどの団体が提供している。それらの団体のサイトへのリンクは、ボストン市役所など公共機関のサイトの内部のページからリンクされていたりする。日本でいえば、東京都のサイト内に、ホームレス・困窮者支援団体のサイトへのリンクがあるのと同じような状況である。
このことを、「公共が手に負えない問題をNGO・NPOに丸投げしている」と見ることも可能であろうし、「このように民間活力を利用すれば、低福祉の小さな政府でも大丈夫」と見ることも可能かもしれない。
ただ、はっきりしているのは、アメリカは決して成功例ではないということだ。街に溢れる多数のホームレスが、そのことを証明している。アメリカの社会保障制度から何かを学び、日本に取り入れるべきであるとすれば、ホームレスを増加させ続けてきた冷酷な側面ではなく、困窮の末に孤立しがちな人々を社会へとつないで包摂する、決して押し付けがましくない営みの数々ではないか。
マサチューセッツ州の9つの郡と190の町で炊き出し・食糧配布を展開する「The Greater Boston Food Bank」のサイト内には、最寄りのどこで、いつ食糧が配布されるかを示す地図がある。