生活保護の申請を行うと、役所から親族へ「扶養照会」という通知書が行くことになる。通知の内容は、「○○さんが現在保護の申請をしているので、経済的、精神的援助を行ってもらえないか」という内容となる。これにより、確かに親族に生活保護の申請がばれることになる。しかし、実はこの扶養照会は、絶対に親族に送らなければならないものではないのだ。親族による扶養ができるかどうかは保護の要件ではないからである。つまり、何らかの理由があれば、通知を送らないようにすることができる。
何らかの理由とは、例えば、
@ 上京等により、出身地を離れてから、10年以上音信不通で、明らかに扶養が期待できない場合
A 生活の困窮に至る過程で疎遠になり、過去1年以上の間、音信も含めて全く交流関係が途絶えている場合
の2点が考えられる。
親族に保護の申請がばれないようにするには、上記の2つのどちらかを理由として通知は送らないようにしてもらうことだ。
では、生活保護を申請すると、どこまでの親族に保護の受給がばれる可能性があるのか。生活保護の制度上、扶養義務がある親族の範囲には以下の2つの考え方がある。
@ 絶対的扶養義務者
A 相対的扶養義務者で、現に扶養をしている人または、過去にその世帯から扶養を受けていた等の特別な事情があるもの
@の絶対的扶養義務者とは、3親等以内の直系血族、兄弟姉妹、配偶者を指す。具体的に言うと、父母、祖父母、曾祖父母、子、孫、ひ孫、兄弟姉妹、配偶者をいう。扶養義務に「絶対的」と付くだけあって、該当する人には特別な事情がない限り、扶養の調査が行われる。つまり、生活保護を申請したことがばれるということだ。
Aの相対的扶養義務者とは、3親等以内の傍系姻族を指す。具体的に言うと、伯父、叔母、甥姪、甥姪の配偶者、叔父叔母の配偶者、配偶者の父母、祖父母、曾祖父母、その伯父叔母、伯父父母の兄弟、甥姪である。相対的扶養義務者については、直接的な血のつながりはない。そのことから、現に相対的扶養義務者から援助を受けているか、過去に相対的扶養義務者に援助を自分が行っていた等という特別な事情がある場合に調査が及ぶ。ざっくりいえば、相対的扶養義務者については、昔から付き合いが深く、金銭的に助け合っていたような関係がある場合に、扶養調査の対象となり、保護の申請がばれると理解していただければ十分だ。