2017年01月20日

増加する自殺者 日本の自殺の動向

 現在、日本では自ら命を絶つ人々が12年連続で3万人以上となっている。警察庁発表 の数字では2009年の自殺者は3万2845人。これは同年の交通事故死亡者数 4914人の5倍以上の数字であり、1日平均で約89人、1時間に約3.7人、16分に1人が自殺している計算になる。また自殺未遂者はこの10倍はいると言われている。
 自殺の問題を考えるとき、時間軸で言うと2つのポイントがあると「NPO 法人自殺対 策支援センター ライフリンク」の清水康之氏は述べている。1つは1998年の自殺急増。日本の自殺者は長い間 2万人台で推移していたにもかかわらず、それが1998年になると 突如として3万2863人に跳ね上がってしまった点。もう1つは、なぜ増加したまま止まり、12年連続3万人超えという事態が続いているのかという点である。日本の自殺が急増したのはもっと正確に言うと98年の3月のことである。98年2月まではだいたい月2000人程度で推移してきていたものが3月から 3000 人ペースになる。98年3月は別の表現をすると97年度の年度末、決算期にあたる。97年といえば三洋證券、北海道拓殖銀行が 経営破綻に陥り、山一証券の自主廃業があった年である。山一証券では破綻した当日まで社員には何も知らされず、いきなり解雇が告げられたという。その年の年度末には日銀の短観が急激に悪化し、倒産件数も急増、98年3月には完全失業率が初めて4%台に乗 った。そういった社会経済状況の悪化に引きずられるようにして、自殺が急増したのである。そして「自殺は個人の問題」とされ社会的な対策が遅れる中で年間自殺者3万人という異常事態が続いているのである。これは本当に個人の問題なのだろうか。
 では、日本特有の自殺要因は何何だろう。警察庁が発表した2009年の自殺者のうち原因・動機が明らかにされているもののうち1位は健康問題で 1万5867人、2位に経済・生活問題で8377人、3位に家庭問題4117人となっている。 
 健康問題のうち6000人以上が「うつ病」だといわれている。また職業別に自殺者数を みると「無職者」が 1万8722人で全体の57%を占め最も多く、次いで「被雇用者・勤め 人」、「自営業・家族従事者」、「学生・生徒等」と続く。「無職者」というよりは「働きたいが仕事先が見つからずに苦悩していた人」と解釈した方がいいかもしれない。
 年齢別では「50歳代」、「60歳代」、「40歳代」の順に多く、これらの年代はすべて前年より増加して いる。もちろん自殺に至るまでにはさまざまな要因が複雑に絡み合っている。個人的な問題も 多いだろう。しかし、原因を探っていったとき「健康問題・無職者」という 2つのキーワードは何年経過しても変わっていない。やっと就職できたと思っても派遣社員で、いつクビを切られるかわからないという恐怖に怯えながら毎日何十時間も働かされる。そうして心労が重なりうつ病になり死を選ぶ。会社の経営の悪化から長年勤めた会社を50歳過ぎで突然リストラされる。退職金もままならない。いまさら高齢の自分を雇ってくれる会社もなく、老後に不安をおぼえ自殺に至る。こうしたことから自殺と労働は切っても切れない関係にあることがわかる。今回は特に日本特有の原因とも言える「過労死」について検討する。
 「過労死」という言葉はいつのまにか登場し、いつしかその言葉の意味に驚かされないほど日本に定着してしまった。それどころか日本のみならず「KAROSHI」として世界各 国でそのまま用いられ、日本人の悲惨な労働実態を象徴する言葉になってしまった。「過労死」とは長時間のサービス残業や厳しすぎるノルマ、休日なしの勤務を強いられた結果、 過労やストレスが原因となって心臓発作や脳溢血により突然死することである。自殺の原 因・動機の4位に勤務問題が挙げられているが、「過労死」の多くはそれに至るまでに食欲減退、寝不足からの「うつ状態」を伴うことが多い。つまり自殺の原因・動機の1位で ある健康問題にも通じているのだ。突然死と自殺は異なるのではないかと思うかもしれな い。しかし、当人が自ら死ぬこと以外でその過酷な現状から抜け出す方法が見つからないほど追いつめられていたとすれば(「ゆるやかな自殺」)、この2つは同じことではないだ ろうか。
 80年代は年間労働時間が2000時間以上の年が続き、日本の経済発展は「働きすぎ」がもたらしたものとして国際的に強く批判された。その後、「新前川レポート」で2000年 に向けて他の先進国を下回る1800時間程度を目標とすることが決められ、1988年には労 働基準法が改正に伴い、法定労働時間が48時間か40時間へ段階的に引き下げられた。 同時に、90年代には週休2日制も多くの企業で導入された。ところが数値だけでは他の先進国と大差がなくなったように見えるものの、実感的に労働時間が減ったと感じられないのはなぜなのだろうか。その答えの1つは2000年に導入された裁量労働にある。裁量労働に成果主義賃金を取り入れている企業の場合、その労働時間は無制限になりやすい。残業をしても裁量のため残業手当はつかない。残業代が残業の歯止めになっていたのに、余分な賃金を支払わずに済むようになった会社は「君の処理能力が低いから仕方ない」と言わんばかりに働かされる。たとえ週休2日でもこうした人々は家にまで仕事を持って帰らざるを得ない。
 また都市部に行けば行くほど、通勤時間も長くなる。日本では片道2時間をかけて電車 とバスを乗り継いで通う人々がいると聞いたある外国人は「これは通勤ではなく旅行だ」と言ったという。朝から晩まで働き続ける日本人。「企業戦士」という言葉が示すように、日本人にとって会社は戦場であり、働くということは生死にかかわる戦いに等しいのかもしれない。
posted by GHQ/HOGO at 08:17| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする