2018年05月21日

多くの政策は「思い込み」で実行される

 今、世界で最も注目される開発経済学者の1人であるエステル・デュフロ氏は、MIT(マサチューセッツ工科大学)のチームの仲間たちと一緒に、ランダム化比較実験(RCT)を世界各地で実践している。RCTの基本はシンプルである。特定の政策の対象になるグループと対象にならないグループをランダムに分けて、政策の効果を客観的に計測するのだ。たとえば、子供を予防接種会場に連れてきた親に、1キロのレンズ豆(インドでは主食の一部)というささやかな報償を与えることにする。
 さて、接種率はどのくらい向上するだろうか。調査協力者をランダムに選び、一方のグループ(処置群)では親にレンズ豆を与え、別のグループ(対照群)には与えない。そして、処置群のほうで予防接種率が向上したとしたら、それは純粋にレンズ豆の報償の効果だったことがわかる。
 日本のような先進国でも、同じような実験を考えることができる。禁煙の促進、出生率の向上、自殺率の低下、女性の地位向上、学力の向上、生活習慣病の予防、より一般的に各種の補助金の効果など、多様な政策への応用が考えられる。
 商品のマーケティングにも応用できるだろう。たとえば、ランダムに選んだ顧客グループごとにダイレクトメールの内容を変えて、反応の違いを統計的に観察してみるわけである。市民や顧客に何を提案したら目標を達成できるのか、科学的に効果を計測しよう、ということだ。
 発展途上国でも日本でも、多くの政策は「思い込み」や「期待」だけで実行に移され、客観的な効果は検証されないままである。しかし、デュフロ氏たちのチームの活発な活動が推進力となって、途上国のあちこちでRCTが大規模に実施されるようになってきた。
 2010年以降も、デュフロ氏のチームは世界で実験を繰り返している。デュフロ氏のホームページを訪問すると、すべて英語ではあるが、彼女が執筆に参加した論文の多くをダウンロードして読むことができる(https://economics.mit.edu/faculty/eduflo/papers)。実験がどこまで広がっているか、どのような結果が報告されているか、ワンクリックで最新の状況がわかる時代になった。このようにRCTが普及してきた今だからこそ、RCTには何ができて、何ができないかを整理しておくことが大切だろう。
 デュフロ氏は貧困を解消する「魔法の杖は存在しない」というメッセージで締めくくられているが、最近は、RCTが万能の魔法の杖だと勘違いする人も増えている気がする。
posted by GHQ/HOGO at 07:26| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

多くの政策は「思い込み」で実行される

 今、世界で最も注目される開発経済学者の1人であるエステル・デュフロ氏は、MIT(マサチューセッツ工科大学)のチームの仲間たちと一緒に、ランダム化比較実験(RCT)を世界各地で実践している。RCTの基本はシンプルである。特定の政策の対象になるグループと対象にならないグループをランダムに分けて、政策の効果を客観的に計測するのだ。たとえば、子供を予防接種会場に連れてきた親に、1キロのレンズ豆(インドでは主食の一部)というささやかな報償を与えることにする。
 さて、接種率はどのくらい向上するだろうか。調査協力者をランダムに選び、一方のグループ(処置群)では親にレンズ豆を与え、別のグループ(対照群)には与えない。そして、処置群のほうで予防接種率が向上したとしたら、それは純粋にレンズ豆の報償の効果だったことがわかる。
 日本のような先進国でも、同じような実験を考えることができる。禁煙の促進、出生率の向上、自殺率の低下、女性の地位向上、学力の向上、生活習慣病の予防、より一般的に各種の補助金の効果など、多様な政策への応用が考えられる。
 商品のマーケティングにも応用できるだろう。たとえば、ランダムに選んだ顧客グループごとにダイレクトメールの内容を変えて、反応の違いを統計的に観察してみるわけである。市民や顧客に何を提案したら目標を達成できるのか、科学的に効果を計測しよう、ということだ。
 発展途上国でも日本でも、多くの政策は「思い込み」や「期待」だけで実行に移され、客観的な効果は検証されないままである。しかし、デュフロ氏たちのチームの活発な活動が推進力となって、途上国のあちこちでRCTが大規模に実施されるようになってきた。
 2010年以降も、デュフロ氏のチームは世界で実験を繰り返している。デュフロ氏のホームページを訪問すると、すべて英語ではあるが、彼女が執筆に参加した論文の多くをダウンロードして読むことができる(https://economics.mit.edu/faculty/eduflo/papers)。実験がどこまで広がっているか、どのような結果が報告されているか、ワンクリックで最新の状況がわかる時代になった。このようにRCTが普及してきた今だからこそ、RCTには何ができて、何ができないかを整理しておくことが大切だろう。
 デュフロ氏は貧困を解消する「魔法の杖は存在しない」というメッセージで締めくくられているが、最近は、RCTが万能の魔法の杖だと勘違いする人も増えている気がする。
posted by GHQ/HOGO at 07:26| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

多くの政策は「思い込み」で実行される

 今、世界で最も注目される開発経済学者の1人であるエステル・デュフロ氏は、MIT(マサチューセッツ工科大学)のチームの仲間たちと一緒に、ランダム化比較実験(RCT)を世界各地で実践している。RCTの基本はシンプルである。特定の政策の対象になるグループと対象にならないグループをランダムに分けて、政策の効果を客観的に計測するのだ。たとえば、子供を予防接種会場に連れてきた親に、1キロのレンズ豆(インドでは主食の一部)というささやかな報償を与えることにする。
 さて、接種率はどのくらい向上するだろうか。調査協力者をランダムに選び、一方のグループ(処置群)では親にレンズ豆を与え、別のグループ(対照群)には与えない。そして、処置群のほうで予防接種率が向上したとしたら、それは純粋にレンズ豆の報償の効果だったことがわかる。
 日本のような先進国でも、同じような実験を考えることができる。禁煙の促進、出生率の向上、自殺率の低下、女性の地位向上、学力の向上、生活習慣病の予防、より一般的に各種の補助金の効果など、多様な政策への応用が考えられる。
 商品のマーケティングにも応用できるだろう。たとえば、ランダムに選んだ顧客グループごとにダイレクトメールの内容を変えて、反応の違いを統計的に観察してみるわけである。市民や顧客に何を提案したら目標を達成できるのか、科学的に効果を計測しよう、ということだ。
 発展途上国でも日本でも、多くの政策は「思い込み」や「期待」だけで実行に移され、客観的な効果は検証されないままである。しかし、デュフロ氏たちのチームの活発な活動が推進力となって、途上国のあちこちでRCTが大規模に実施されるようになってきた。
 2010年以降も、デュフロ氏のチームは世界で実験を繰り返している。デュフロ氏のホームページを訪問すると、すべて英語ではあるが、彼女が執筆に参加した論文の多くをダウンロードして読むことができる(https://economics.mit.edu/faculty/eduflo/papers)。実験がどこまで広がっているか、どのような結果が報告されているか、ワンクリックで最新の状況がわかる時代になった。このようにRCTが普及してきた今だからこそ、RCTには何ができて、何ができないかを整理しておくことが大切だろう。
 デュフロ氏は貧困を解消する「魔法の杖は存在しない」というメッセージで締めくくられているが、最近は、RCTが万能の魔法の杖だと勘違いする人も増えている気がする。
posted by GHQ/HOGO at 07:26| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月20日

低所得化に合わせて基準を下げてよいのか?

 生活保護の8種類の扶助のうち、主たる生活費である生活扶助の基準の見直しを厚生労働省が昨年12月に決めた。2018年10月から20年10月にかけ、3段階に分けて実施される。
 見直しの影響は、世帯の人数、年齢構成、居住地域によって異なり、今より基準額が増える世帯もあるが、減る世帯のほうがはるかに多く、最大では5%下がる。生活扶助の総額で見ると、1.8%のマイナス。13年8月から15年4月にかけて平均7.3%(最大10%)の大幅引き下げが行われたのに続くダウンになる。
 なぜ、そうしたのか。簡単に言うと、低所得層(消費支出が最下位10%の世帯)の消費水準に合わせて基準を見直した結果だ。国民の生活水準が全般に低下してきた中で、貧しい層の動向に合わせるというやり方で、「健康で文化的な最低限度の生活」は守られるのか。
 見直しによって、生活扶助の基準額が具体的にどう変わるのか。大まかに見ると、大都市部、高齢単身者、子どもの多い世帯はもっぱらマイナスになり、地方の郡部、夫婦だけの世帯、子供1人の世帯ではプラスの傾向である。それで全体としてダウンするのは、生活保護世帯は大都市圏に多く、しかも高齢単身者が多いからである。厚労省の推計によると、生活扶助額が上がる世帯は26%、変わらない世帯が8%、下がる世帯が67%となっている。
 全体の金額で影響を見ると、3段階の見直しが完了した段階で、生活扶助の本体部分の国負担額は年間でマイナス180億円、子供のいる世帯への加算額の見直しがプラス20億円。差し引きマイナス160億円となっている。18年度予算の概算要求で生活扶助の国負担見込み額は9056億円なので、それと比べると1.8%のダウン。生活保護費の国の負担割合は4分の3なので、実際の生活扶助費の総額は年間213億円のマイナスになる。それだけでなく、基準が下がると保護対象となる世帯が減るので、削減額はさらに大きくなる。
 生活保護の基準は厚労省が告示で定めている。どういう方式で生活扶助の基準を改定するか、ルールは決まっていないのだ。今回、現行の基準が適切かどうかの検証作業は、16年5月から社会保障審議会生活保護基準部会で行われたが、多くの委員から「新たな検証方式を考えるべきだ」といった意見が出た。しかし、事務局の厚労省保護課が主導して「水準均衡方式」で検証作業を進めた。
 水準均衡方式でも、どの層の消費実態を参照するかはいくつかの選択肢があるのだが、用いたのは最下位10%の層だ。総務省の全国消費実態調査のデータ(14年調査分)で、消費支出が最も低い10%の世帯(うち生活保護と見られる世帯は除外)の消費支出の状況を見て、それを生活扶助の基準と比べたのである。その検証結果をあてはめて生活扶助の基準を修正すると、最大13.7%の減額になる世帯が出るところだが、厚労省は影響の大きさを考えて、下げ幅にキャップをかぶせ、最大5%に抑えることにして公表した。
 ただし、 基準部会の報告書 は、検証結果を1つの試算として示しただけで、基準をどうするべきだという意見は述べていない。厚労省による最終的な基準改定の内容も、基準部会には諮られていない。つまり今回の見直しは、基準部会の委員になった専門家の合意を経た内容ではなく、あくまでも厚労省による政策決定なのだ。
 最下位10%の層に合わせる水準均衡方式には、大きな問題がある。最も貧しい層の中には、最低限度を下回る暮らしの世帯が相当含まれるからなのだ。生活保護の要件を収入・資産の両面で満たす世帯のうち、実際に保護を利用している割合(捕捉率)は2〜3割と見られる。恥の意識、福祉事務所の冷たい対応、保護を受けるために自動車を手放すと暮らせないといった事情で、厳しい生活に耐えている貧困層。その低すぎる生活水準に生活保護を合わせることになりかねない。
 そして、国民の生活水準の低下傾向が続く中で、最も貧しい層との比較を続けると、保護基準が際限なく下がり続けてしまう。「健康で文化的な最低限度の生活」に必要と考えられる費目を積み上げるマーケットバスケット方式を改めて用いるなど、何らかの形で絶対的なラインを設定するべきではないだろうか。この問題は、基準部会の報告書も強調している。
 生活保護の基準の改定は、政府が国民に最低保障する生活水準(ナショナルミニマム)が変わるということです。いま安定した暮らしの人でも、病気、けが、死別、失業など何らかの事情で生活に困る可能性があります。そのとき基準額が下がっていると、政府が確保してくれる生活水準が低くなるわけです。具体的には、三つの面で影響が生じます。
  第1に、現に生活保護を利用している世帯が受け取る額が減る。
  第2に、生活保護を利用できるラインが下がる。収入が基準額より少し低い水準の世帯は、これまでなら利用できた保護を受けられなくなる。
  第3に、保護基準の引き下げは、他の制度にも影響する。
 住民税の非課税限度額、就学援助の基準、最低賃金、大学の授業料・入学金の減免などは保護基準を参照して決められる。介護保険料の区分、介護施設入所中の食費・居住費も保護基準に連動する部分がある。また、住民税の非課税限度額が下がると、医療保険の高額療養費制度、入院中の食費、障害者福祉、障害者や難病患者の医療費、保育料など、数多くの制度の負担区分に影響が及び、これまでより負担の増える世帯が出てくる。保護を受けていない人々にとっても他人事ではないのだ。

posted by GHQ/HOGO at 07:25| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

低所得化に合わせて基準を下げてよいのか?

 生活保護の8種類の扶助のうち、主たる生活費である生活扶助の基準の見直しを厚生労働省が昨年12月に決めた。2018年10月から20年10月にかけ、3段階に分けて実施される。
 見直しの影響は、世帯の人数、年齢構成、居住地域によって異なり、今より基準額が増える世帯もあるが、減る世帯のほうがはるかに多く、最大では5%下がる。生活扶助の総額で見ると、1.8%のマイナス。13年8月から15年4月にかけて平均7.3%(最大10%)の大幅引き下げが行われたのに続くダウンになる。
 なぜ、そうしたのか。簡単に言うと、低所得層(消費支出が最下位10%の世帯)の消費水準に合わせて基準を見直した結果だ。国民の生活水準が全般に低下してきた中で、貧しい層の動向に合わせるというやり方で、「健康で文化的な最低限度の生活」は守られるのか。
 見直しによって、生活扶助の基準額が具体的にどう変わるのか。大まかに見ると、大都市部、高齢単身者、子どもの多い世帯はもっぱらマイナスになり、地方の郡部、夫婦だけの世帯、子供1人の世帯ではプラスの傾向である。それで全体としてダウンするのは、生活保護世帯は大都市圏に多く、しかも高齢単身者が多いからである。厚労省の推計によると、生活扶助額が上がる世帯は26%、変わらない世帯が8%、下がる世帯が67%となっている。
 全体の金額で影響を見ると、3段階の見直しが完了した段階で、生活扶助の本体部分の国負担額は年間でマイナス180億円、子供のいる世帯への加算額の見直しがプラス20億円。差し引きマイナス160億円となっている。18年度予算の概算要求で生活扶助の国負担見込み額は9056億円なので、それと比べると1.8%のダウン。生活保護費の国の負担割合は4分の3なので、実際の生活扶助費の総額は年間213億円のマイナスになる。それだけでなく、基準が下がると保護対象となる世帯が減るので、削減額はさらに大きくなる。
 生活保護の基準は厚労省が告示で定めている。どういう方式で生活扶助の基準を改定するか、ルールは決まっていないのだ。今回、現行の基準が適切かどうかの検証作業は、16年5月から社会保障審議会生活保護基準部会で行われたが、多くの委員から「新たな検証方式を考えるべきだ」といった意見が出た。しかし、事務局の厚労省保護課が主導して「水準均衡方式」で検証作業を進めた。
 水準均衡方式でも、どの層の消費実態を参照するかはいくつかの選択肢があるのだが、用いたのは最下位10%の層だ。総務省の全国消費実態調査のデータ(14年調査分)で、消費支出が最も低い10%の世帯(うち生活保護と見られる世帯は除外)の消費支出の状況を見て、それを生活扶助の基準と比べたのである。その検証結果をあてはめて生活扶助の基準を修正すると、最大13.7%の減額になる世帯が出るところだが、厚労省は影響の大きさを考えて、下げ幅にキャップをかぶせ、最大5%に抑えることにして公表した。
 ただし、 基準部会の報告書 は、検証結果を1つの試算として示しただけで、基準をどうするべきだという意見は述べていない。厚労省による最終的な基準改定の内容も、基準部会には諮られていない。つまり今回の見直しは、基準部会の委員になった専門家の合意を経た内容ではなく、あくまでも厚労省による政策決定なのだ。
 最下位10%の層に合わせる水準均衡方式には、大きな問題がある。最も貧しい層の中には、最低限度を下回る暮らしの世帯が相当含まれるからなのだ。生活保護の要件を収入・資産の両面で満たす世帯のうち、実際に保護を利用している割合(捕捉率)は2〜3割と見られる。恥の意識、福祉事務所の冷たい対応、保護を受けるために自動車を手放すと暮らせないといった事情で、厳しい生活に耐えている貧困層。その低すぎる生活水準に生活保護を合わせることになりかねない。
 そして、国民の生活水準の低下傾向が続く中で、最も貧しい層との比較を続けると、保護基準が際限なく下がり続けてしまう。「健康で文化的な最低限度の生活」に必要と考えられる費目を積み上げるマーケットバスケット方式を改めて用いるなど、何らかの形で絶対的なラインを設定するべきではないだろうか。この問題は、基準部会の報告書も強調している。
 生活保護の基準の改定は、政府が国民に最低保障する生活水準(ナショナルミニマム)が変わるということです。いま安定した暮らしの人でも、病気、けが、死別、失業など何らかの事情で生活に困る可能性があります。そのとき基準額が下がっていると、政府が確保してくれる生活水準が低くなるわけです。具体的には、三つの面で影響が生じます。
  第1に、現に生活保護を利用している世帯が受け取る額が減る。
  第2に、生活保護を利用できるラインが下がる。収入が基準額より少し低い水準の世帯は、これまでなら利用できた保護を受けられなくなる。
  第3に、保護基準の引き下げは、他の制度にも影響する。
 住民税の非課税限度額、就学援助の基準、最低賃金、大学の授業料・入学金の減免などは保護基準を参照して決められる。介護保険料の区分、介護施設入所中の食費・居住費も保護基準に連動する部分がある。また、住民税の非課税限度額が下がると、医療保険の高額療養費制度、入院中の食費、障害者福祉、障害者や難病患者の医療費、保育料など、数多くの制度の負担区分に影響が及び、これまでより負担の増える世帯が出てくる。保護を受けていない人々にとっても他人事ではないのだ。

posted by GHQ/HOGO at 07:25| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

低所得化に合わせて基準を下げてよいのか?

 生活保護の8種類の扶助のうち、主たる生活費である生活扶助の基準の見直しを厚生労働省が昨年12月に決めた。2018年10月から20年10月にかけ、3段階に分けて実施される。
 見直しの影響は、世帯の人数、年齢構成、居住地域によって異なり、今より基準額が増える世帯もあるが、減る世帯のほうがはるかに多く、最大では5%下がる。生活扶助の総額で見ると、1.8%のマイナス。13年8月から15年4月にかけて平均7.3%(最大10%)の大幅引き下げが行われたのに続くダウンになる。
 なぜ、そうしたのか。簡単に言うと、低所得層(消費支出が最下位10%の世帯)の消費水準に合わせて基準を見直した結果だ。国民の生活水準が全般に低下してきた中で、貧しい層の動向に合わせるというやり方で、「健康で文化的な最低限度の生活」は守られるのか。
 見直しによって、生活扶助の基準額が具体的にどう変わるのか。大まかに見ると、大都市部、高齢単身者、子どもの多い世帯はもっぱらマイナスになり、地方の郡部、夫婦だけの世帯、子供1人の世帯ではプラスの傾向である。それで全体としてダウンするのは、生活保護世帯は大都市圏に多く、しかも高齢単身者が多いからである。厚労省の推計によると、生活扶助額が上がる世帯は26%、変わらない世帯が8%、下がる世帯が67%となっている。
 全体の金額で影響を見ると、3段階の見直しが完了した段階で、生活扶助の本体部分の国負担額は年間でマイナス180億円、子供のいる世帯への加算額の見直しがプラス20億円。差し引きマイナス160億円となっている。18年度予算の概算要求で生活扶助の国負担見込み額は9056億円なので、それと比べると1.8%のダウン。生活保護費の国の負担割合は4分の3なので、実際の生活扶助費の総額は年間213億円のマイナスになる。それだけでなく、基準が下がると保護対象となる世帯が減るので、削減額はさらに大きくなる。
 生活保護の基準は厚労省が告示で定めている。どういう方式で生活扶助の基準を改定するか、ルールは決まっていないのだ。今回、現行の基準が適切かどうかの検証作業は、16年5月から社会保障審議会生活保護基準部会で行われたが、多くの委員から「新たな検証方式を考えるべきだ」といった意見が出た。しかし、事務局の厚労省保護課が主導して「水準均衡方式」で検証作業を進めた。
 水準均衡方式でも、どの層の消費実態を参照するかはいくつかの選択肢があるのだが、用いたのは最下位10%の層だ。総務省の全国消費実態調査のデータ(14年調査分)で、消費支出が最も低い10%の世帯(うち生活保護と見られる世帯は除外)の消費支出の状況を見て、それを生活扶助の基準と比べたのである。その検証結果をあてはめて生活扶助の基準を修正すると、最大13.7%の減額になる世帯が出るところだが、厚労省は影響の大きさを考えて、下げ幅にキャップをかぶせ、最大5%に抑えることにして公表した。
 ただし、 基準部会の報告書 は、検証結果を1つの試算として示しただけで、基準をどうするべきだという意見は述べていない。厚労省による最終的な基準改定の内容も、基準部会には諮られていない。つまり今回の見直しは、基準部会の委員になった専門家の合意を経た内容ではなく、あくまでも厚労省による政策決定なのだ。
 最下位10%の層に合わせる水準均衡方式には、大きな問題がある。最も貧しい層の中には、最低限度を下回る暮らしの世帯が相当含まれるからなのだ。生活保護の要件を収入・資産の両面で満たす世帯のうち、実際に保護を利用している割合(捕捉率)は2〜3割と見られる。恥の意識、福祉事務所の冷たい対応、保護を受けるために自動車を手放すと暮らせないといった事情で、厳しい生活に耐えている貧困層。その低すぎる生活水準に生活保護を合わせることになりかねない。
 そして、国民の生活水準の低下傾向が続く中で、最も貧しい層との比較を続けると、保護基準が際限なく下がり続けてしまう。「健康で文化的な最低限度の生活」に必要と考えられる費目を積み上げるマーケットバスケット方式を改めて用いるなど、何らかの形で絶対的なラインを設定するべきではないだろうか。この問題は、基準部会の報告書も強調している。
 生活保護の基準の改定は、政府が国民に最低保障する生活水準(ナショナルミニマム)が変わるということです。いま安定した暮らしの人でも、病気、けが、死別、失業など何らかの事情で生活に困る可能性があります。そのとき基準額が下がっていると、政府が確保してくれる生活水準が低くなるわけです。具体的には、三つの面で影響が生じます。
  第1に、現に生活保護を利用している世帯が受け取る額が減る。
  第2に、生活保護を利用できるラインが下がる。収入が基準額より少し低い水準の世帯は、これまでなら利用できた保護を受けられなくなる。
  第3に、保護基準の引き下げは、他の制度にも影響する。
 住民税の非課税限度額、就学援助の基準、最低賃金、大学の授業料・入学金の減免などは保護基準を参照して決められる。介護保険料の区分、介護施設入所中の食費・居住費も保護基準に連動する部分がある。また、住民税の非課税限度額が下がると、医療保険の高額療養費制度、入院中の食費、障害者福祉、障害者や難病患者の医療費、保育料など、数多くの制度の負担区分に影響が及び、これまでより負担の増える世帯が出てくる。保護を受けていない人々にとっても他人事ではないのだ。

posted by GHQ/HOGO at 07:25| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

低所得化に合わせて基準を下げてよいのか?

 生活保護の8種類の扶助のうち、主たる生活費である生活扶助の基準の見直しを厚生労働省が昨年12月に決めた。2018年10月から20年10月にかけ、3段階に分けて実施される。
 見直しの影響は、世帯の人数、年齢構成、居住地域によって異なり、今より基準額が増える世帯もあるが、減る世帯のほうがはるかに多く、最大では5%下がる。生活扶助の総額で見ると、1.8%のマイナス。13年8月から15年4月にかけて平均7.3%(最大10%)の大幅引き下げが行われたのに続くダウンになる。
 なぜ、そうしたのか。簡単に言うと、低所得層(消費支出が最下位10%の世帯)の消費水準に合わせて基準を見直した結果だ。国民の生活水準が全般に低下してきた中で、貧しい層の動向に合わせるというやり方で、「健康で文化的な最低限度の生活」は守られるのか。
 見直しによって、生活扶助の基準額が具体的にどう変わるのか。大まかに見ると、大都市部、高齢単身者、子どもの多い世帯はもっぱらマイナスになり、地方の郡部、夫婦だけの世帯、子供1人の世帯ではプラスの傾向である。それで全体としてダウンするのは、生活保護世帯は大都市圏に多く、しかも高齢単身者が多いからである。厚労省の推計によると、生活扶助額が上がる世帯は26%、変わらない世帯が8%、下がる世帯が67%となっている。
 全体の金額で影響を見ると、3段階の見直しが完了した段階で、生活扶助の本体部分の国負担額は年間でマイナス180億円、子供のいる世帯への加算額の見直しがプラス20億円。差し引きマイナス160億円となっている。18年度予算の概算要求で生活扶助の国負担見込み額は9056億円なので、それと比べると1.8%のダウン。生活保護費の国の負担割合は4分の3なので、実際の生活扶助費の総額は年間213億円のマイナスになる。それだけでなく、基準が下がると保護対象となる世帯が減るので、削減額はさらに大きくなる。
 生活保護の基準は厚労省が告示で定めている。どういう方式で生活扶助の基準を改定するか、ルールは決まっていないのだ。今回、現行の基準が適切かどうかの検証作業は、16年5月から社会保障審議会生活保護基準部会で行われたが、多くの委員から「新たな検証方式を考えるべきだ」といった意見が出た。しかし、事務局の厚労省保護課が主導して「水準均衡方式」で検証作業を進めた。
 水準均衡方式でも、どの層の消費実態を参照するかはいくつかの選択肢があるのだが、用いたのは最下位10%の層だ。総務省の全国消費実態調査のデータ(14年調査分)で、消費支出が最も低い10%の世帯(うち生活保護と見られる世帯は除外)の消費支出の状況を見て、それを生活扶助の基準と比べたのである。その検証結果をあてはめて生活扶助の基準を修正すると、最大13.7%の減額になる世帯が出るところだが、厚労省は影響の大きさを考えて、下げ幅にキャップをかぶせ、最大5%に抑えることにして公表した。
 ただし、 基準部会の報告書 は、検証結果を1つの試算として示しただけで、基準をどうするべきだという意見は述べていない。厚労省による最終的な基準改定の内容も、基準部会には諮られていない。つまり今回の見直しは、基準部会の委員になった専門家の合意を経た内容ではなく、あくまでも厚労省による政策決定なのだ。
 最下位10%の層に合わせる水準均衡方式には、大きな問題がある。最も貧しい層の中には、最低限度を下回る暮らしの世帯が相当含まれるからなのだ。生活保護の要件を収入・資産の両面で満たす世帯のうち、実際に保護を利用している割合(捕捉率)は2〜3割と見られる。恥の意識、福祉事務所の冷たい対応、保護を受けるために自動車を手放すと暮らせないといった事情で、厳しい生活に耐えている貧困層。その低すぎる生活水準に生活保護を合わせることになりかねない。
 そして、国民の生活水準の低下傾向が続く中で、最も貧しい層との比較を続けると、保護基準が際限なく下がり続けてしまう。「健康で文化的な最低限度の生活」に必要と考えられる費目を積み上げるマーケットバスケット方式を改めて用いるなど、何らかの形で絶対的なラインを設定するべきではないだろうか。この問題は、基準部会の報告書も強調している。
 生活保護の基準の改定は、政府が国民に最低保障する生活水準(ナショナルミニマム)が変わるということです。いま安定した暮らしの人でも、病気、けが、死別、失業など何らかの事情で生活に困る可能性があります。そのとき基準額が下がっていると、政府が確保してくれる生活水準が低くなるわけです。具体的には、三つの面で影響が生じます。
  第1に、現に生活保護を利用している世帯が受け取る額が減る。
  第2に、生活保護を利用できるラインが下がる。収入が基準額より少し低い水準の世帯は、これまでなら利用できた保護を受けられなくなる。
  第3に、保護基準の引き下げは、他の制度にも影響する。
 住民税の非課税限度額、就学援助の基準、最低賃金、大学の授業料・入学金の減免などは保護基準を参照して決められる。介護保険料の区分、介護施設入所中の食費・居住費も保護基準に連動する部分がある。また、住民税の非課税限度額が下がると、医療保険の高額療養費制度、入院中の食費、障害者福祉、障害者や難病患者の医療費、保育料など、数多くの制度の負担区分に影響が及び、これまでより負担の増える世帯が出てくる。保護を受けていない人々にとっても他人事ではないのだ。

posted by GHQ/HOGO at 07:25| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月19日

「生活保護費」を搾取する貧困ビジネスが横行、行政も黙認…返還命令判決が一石投じた

「貧困ビジネス」で生活保護費を搾取されたとして、男性2人がかつて入居していた宿泊施設側に対して、保護費の返還などを求めた訴訟の判決がさいたま地裁であった。脇由紀裁判長は「生活保護法の趣旨に反し、違法性が高い」として、施設の経営者に計約1580万円の支払いを命じた。
 路上生活をしていた男性2人は、2005年から2010年にかけて、この経営者が運営する埼玉県内の宿泊施設に入居した。生活保護費を施設側にわたす代わりに食事の提供を受けたが、手元には月2万円ほどの小遣いしか残されなかった。また、6畳程度の部屋を2人で使用し、食事は安価で栄養バランスを欠いたものだったという。
裁判で被告となった埼玉県内にある『株式会社ユニティー』は、有名な悪徳貧困ビジネス業者。
『救済係』と呼ばれる従業員が、東京都の新宿や上野などで、路上生活者らに対し、『埼玉に福祉の寮があるので来ませんか』『1日500円あげるよ』『3度の食事は心配しなくていい』などと声をかけて、勧誘していた。
 それに応じた路上生活者らは、埼玉県内にあるユニティーの寮に連れて来られて、そこから福祉事務所に生活保護を申請し、ユニティーの寮で生活をしていた。
 しかし、生活保護費はすべてユニティーが没収し、入所者には1日500円が渡されるだけ。食事や居住環境も劣悪で、食事の材料のお米はくず米といっていいほど、粗末なものだった。」
判決では、生活保護が憲法25条に基づいて「健康で文化的な最低限度の生活」を保障していることを確認したうえで、「被告は、原告らから生活保護費を全額徴収しながら、原告らに対して、生活保護法に定める健康で文化的な最低限度の生活水準に満たないサービスしか提供せず、その差額をすべて取得していたのであり、かかる被告の行為は、生活保護法の趣旨に反し、その違法性は高い」と断じた。
 さらに、『結局、被告の本件事業は、生活保護費から利益を得ることを目的とし、路上生活者らを多数勧誘して被告寮に入居させ、生活保護費を受給させた上でこれを全額徴収し、入居者らには生活保護基準に満たない劣悪なサービスを提供するのみで、その差額を収受して不当な利益を得ていたと認めた。
 そのような内容の契約は公序良俗に反し無効であり、被告がおこなったことは「原告らの最低限度の生活を営む権利を侵害」しているとして損害賠償の支払を命じたのである。
 また、原告のうち1名は、被告が経営する工場で働かされていた際、指を切断する大ケガをしたことから、この点についても被告に責任があるとして、損害賠償の支払が認められた。
 この判決は、生活保護の利用者を食い物にしている貧困ビジネス業者の行為を「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害する違法なものと断じた点で画期的なものである。
 そして、このような業者が大手を振って存在していることを黙認(場合によっては積極的に利用)している福祉事務所(行政)に対しても、警鐘を鳴らすものといえるのだ。
 公園や駅構内などで、路上生活を余儀なくされている人に対して、いわゆる貧困ビジネス業者が声をかけ、生活保護を受給させたうえで、保護費の大半をピンハネする被害が相次いでいる。
 このような業者は、住まいやお金がなく生活をしていくのが困難な人に対して、あたかも救済してあげるかのようなそぶりをみせながら、実際には劣悪な施設に住まわせ、食事なども粗末なものしか提供しないなど、貧困状態にある人々を食い物にしているのである。
 貧困ビジネス業者からしてみれば、「野宿するよりましじゃないか」「食事も住む場所も提供しているのに文句を言うな」とでも思っているのかもしれないが、法律にしたがって生活保護制度を受給すれば、ピンハネされることなく生活保護を受給でき、アパートに住むことも可能なのだ。
 わざわざ貧困ビジネス業者のお世話になる必要はまったくない。貧困状態にある人を食い物にする貧困ビジネス業者が跋扈することを許さないためにも、生活保護制度をはじめとする制度を周知し、使いやすくすることが重要なのである。
 今回の件は、貧困ビジネスをおこなう民間の悪徳業者の責任が問われた。ただ、忘れてはならないのは、こういった貧困ビジネス業者の存在を許し、場合によっては積極的に利用している行政(福祉事務所)の存在である。
 生活保護制度は、この判決がいうように、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』(憲法25条)を保障するための制度であり、生活に困窮したら誰でも、貧困になった理由に関係なく、いつでも「権利」として利用することが可能な制度なのである。
 住まいのない人に対しては、個室のアパート等の安心できる住居を保障することが国家の責任として定められている(居宅保護の原則)。にもかかわらず、現状では、ホームレス状態の人が、生活保護を申請してもアパートへの入居を認めずに、劣悪な施設への入所を行政(福祉事務所)が積極的にすすめているという実態がある。今回の判決は、このような施設収容を前提とした生活保護行政のあり方にも一石を投じたという意味でも、非常に画期的だったのではないか。
posted by GHQ/HOGO at 07:20| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「生活保護費」を搾取する貧困ビジネスが横行、行政も黙認…返還命令判決が一石投じた

「貧困ビジネス」で生活保護費を搾取されたとして、男性2人がかつて入居していた宿泊施設側に対して、保護費の返還などを求めた訴訟の判決がさいたま地裁であった。脇由紀裁判長は「生活保護法の趣旨に反し、違法性が高い」として、施設の経営者に計約1580万円の支払いを命じた。
 路上生活をしていた男性2人は、2005年から2010年にかけて、この経営者が運営する埼玉県内の宿泊施設に入居した。生活保護費を施設側にわたす代わりに食事の提供を受けたが、手元には月2万円ほどの小遣いしか残されなかった。また、6畳程度の部屋を2人で使用し、食事は安価で栄養バランスを欠いたものだったという。
裁判で被告となった埼玉県内にある『株式会社ユニティー』は、有名な悪徳貧困ビジネス業者。
『救済係』と呼ばれる従業員が、東京都の新宿や上野などで、路上生活者らに対し、『埼玉に福祉の寮があるので来ませんか』『1日500円あげるよ』『3度の食事は心配しなくていい』などと声をかけて、勧誘していた。
 それに応じた路上生活者らは、埼玉県内にあるユニティーの寮に連れて来られて、そこから福祉事務所に生活保護を申請し、ユニティーの寮で生活をしていた。
 しかし、生活保護費はすべてユニティーが没収し、入所者には1日500円が渡されるだけ。食事や居住環境も劣悪で、食事の材料のお米はくず米といっていいほど、粗末なものだった。」
判決では、生活保護が憲法25条に基づいて「健康で文化的な最低限度の生活」を保障していることを確認したうえで、「被告は、原告らから生活保護費を全額徴収しながら、原告らに対して、生活保護法に定める健康で文化的な最低限度の生活水準に満たないサービスしか提供せず、その差額をすべて取得していたのであり、かかる被告の行為は、生活保護法の趣旨に反し、その違法性は高い」と断じた。
 さらに、『結局、被告の本件事業は、生活保護費から利益を得ることを目的とし、路上生活者らを多数勧誘して被告寮に入居させ、生活保護費を受給させた上でこれを全額徴収し、入居者らには生活保護基準に満たない劣悪なサービスを提供するのみで、その差額を収受して不当な利益を得ていたと認めた。
 そのような内容の契約は公序良俗に反し無効であり、被告がおこなったことは「原告らの最低限度の生活を営む権利を侵害」しているとして損害賠償の支払を命じたのである。
 また、原告のうち1名は、被告が経営する工場で働かされていた際、指を切断する大ケガをしたことから、この点についても被告に責任があるとして、損害賠償の支払が認められた。
 この判決は、生活保護の利用者を食い物にしている貧困ビジネス業者の行為を「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害する違法なものと断じた点で画期的なものである。
 そして、このような業者が大手を振って存在していることを黙認(場合によっては積極的に利用)している福祉事務所(行政)に対しても、警鐘を鳴らすものといえるのだ。
 公園や駅構内などで、路上生活を余儀なくされている人に対して、いわゆる貧困ビジネス業者が声をかけ、生活保護を受給させたうえで、保護費の大半をピンハネする被害が相次いでいる。
 このような業者は、住まいやお金がなく生活をしていくのが困難な人に対して、あたかも救済してあげるかのようなそぶりをみせながら、実際には劣悪な施設に住まわせ、食事なども粗末なものしか提供しないなど、貧困状態にある人々を食い物にしているのである。
 貧困ビジネス業者からしてみれば、「野宿するよりましじゃないか」「食事も住む場所も提供しているのに文句を言うな」とでも思っているのかもしれないが、法律にしたがって生活保護制度を受給すれば、ピンハネされることなく生活保護を受給でき、アパートに住むことも可能なのだ。
 わざわざ貧困ビジネス業者のお世話になる必要はまったくない。貧困状態にある人を食い物にする貧困ビジネス業者が跋扈することを許さないためにも、生活保護制度をはじめとする制度を周知し、使いやすくすることが重要なのである。
 今回の件は、貧困ビジネスをおこなう民間の悪徳業者の責任が問われた。ただ、忘れてはならないのは、こういった貧困ビジネス業者の存在を許し、場合によっては積極的に利用している行政(福祉事務所)の存在である。
 生活保護制度は、この判決がいうように、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』(憲法25条)を保障するための制度であり、生活に困窮したら誰でも、貧困になった理由に関係なく、いつでも「権利」として利用することが可能な制度なのである。
 住まいのない人に対しては、個室のアパート等の安心できる住居を保障することが国家の責任として定められている(居宅保護の原則)。にもかかわらず、現状では、ホームレス状態の人が、生活保護を申請してもアパートへの入居を認めずに、劣悪な施設への入所を行政(福祉事務所)が積極的にすすめているという実態がある。今回の判決は、このような施設収容を前提とした生活保護行政のあり方にも一石を投じたという意味でも、非常に画期的だったのではないか。
posted by GHQ/HOGO at 07:20| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「生活保護費」を搾取する貧困ビジネスが横行、行政も黙認…返還命令判決が一石投じた

「貧困ビジネス」で生活保護費を搾取されたとして、男性2人がかつて入居していた宿泊施設側に対して、保護費の返還などを求めた訴訟の判決がさいたま地裁であった。脇由紀裁判長は「生活保護法の趣旨に反し、違法性が高い」として、施設の経営者に計約1580万円の支払いを命じた。
 路上生活をしていた男性2人は、2005年から2010年にかけて、この経営者が運営する埼玉県内の宿泊施設に入居した。生活保護費を施設側にわたす代わりに食事の提供を受けたが、手元には月2万円ほどの小遣いしか残されなかった。また、6畳程度の部屋を2人で使用し、食事は安価で栄養バランスを欠いたものだったという。
裁判で被告となった埼玉県内にある『株式会社ユニティー』は、有名な悪徳貧困ビジネス業者。
『救済係』と呼ばれる従業員が、東京都の新宿や上野などで、路上生活者らに対し、『埼玉に福祉の寮があるので来ませんか』『1日500円あげるよ』『3度の食事は心配しなくていい』などと声をかけて、勧誘していた。
 それに応じた路上生活者らは、埼玉県内にあるユニティーの寮に連れて来られて、そこから福祉事務所に生活保護を申請し、ユニティーの寮で生活をしていた。
 しかし、生活保護費はすべてユニティーが没収し、入所者には1日500円が渡されるだけ。食事や居住環境も劣悪で、食事の材料のお米はくず米といっていいほど、粗末なものだった。」
判決では、生活保護が憲法25条に基づいて「健康で文化的な最低限度の生活」を保障していることを確認したうえで、「被告は、原告らから生活保護費を全額徴収しながら、原告らに対して、生活保護法に定める健康で文化的な最低限度の生活水準に満たないサービスしか提供せず、その差額をすべて取得していたのであり、かかる被告の行為は、生活保護法の趣旨に反し、その違法性は高い」と断じた。
 さらに、『結局、被告の本件事業は、生活保護費から利益を得ることを目的とし、路上生活者らを多数勧誘して被告寮に入居させ、生活保護費を受給させた上でこれを全額徴収し、入居者らには生活保護基準に満たない劣悪なサービスを提供するのみで、その差額を収受して不当な利益を得ていたと認めた。
 そのような内容の契約は公序良俗に反し無効であり、被告がおこなったことは「原告らの最低限度の生活を営む権利を侵害」しているとして損害賠償の支払を命じたのである。
 また、原告のうち1名は、被告が経営する工場で働かされていた際、指を切断する大ケガをしたことから、この点についても被告に責任があるとして、損害賠償の支払が認められた。
 この判決は、生活保護の利用者を食い物にしている貧困ビジネス業者の行為を「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害する違法なものと断じた点で画期的なものである。
 そして、このような業者が大手を振って存在していることを黙認(場合によっては積極的に利用)している福祉事務所(行政)に対しても、警鐘を鳴らすものといえるのだ。
 公園や駅構内などで、路上生活を余儀なくされている人に対して、いわゆる貧困ビジネス業者が声をかけ、生活保護を受給させたうえで、保護費の大半をピンハネする被害が相次いでいる。
 このような業者は、住まいやお金がなく生活をしていくのが困難な人に対して、あたかも救済してあげるかのようなそぶりをみせながら、実際には劣悪な施設に住まわせ、食事なども粗末なものしか提供しないなど、貧困状態にある人々を食い物にしているのである。
 貧困ビジネス業者からしてみれば、「野宿するよりましじゃないか」「食事も住む場所も提供しているのに文句を言うな」とでも思っているのかもしれないが、法律にしたがって生活保護制度を受給すれば、ピンハネされることなく生活保護を受給でき、アパートに住むことも可能なのだ。
 わざわざ貧困ビジネス業者のお世話になる必要はまったくない。貧困状態にある人を食い物にする貧困ビジネス業者が跋扈することを許さないためにも、生活保護制度をはじめとする制度を周知し、使いやすくすることが重要なのである。
 今回の件は、貧困ビジネスをおこなう民間の悪徳業者の責任が問われた。ただ、忘れてはならないのは、こういった貧困ビジネス業者の存在を許し、場合によっては積極的に利用している行政(福祉事務所)の存在である。
 生活保護制度は、この判決がいうように、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』(憲法25条)を保障するための制度であり、生活に困窮したら誰でも、貧困になった理由に関係なく、いつでも「権利」として利用することが可能な制度なのである。
 住まいのない人に対しては、個室のアパート等の安心できる住居を保障することが国家の責任として定められている(居宅保護の原則)。にもかかわらず、現状では、ホームレス状態の人が、生活保護を申請してもアパートへの入居を認めずに、劣悪な施設への入所を行政(福祉事務所)が積極的にすすめているという実態がある。今回の判決は、このような施設収容を前提とした生活保護行政のあり方にも一石を投じたという意味でも、非常に画期的だったのではないか。
posted by GHQ/HOGO at 07:20| 埼玉 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする